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2012年 3月13日

やはり事故は終わっていない
福島ルポ

放射能汚染の根深さを痛感 

 雪が降りしきる車道に犬がたたずんでいた。近付くと脇によけて、尾を振りながら鳴き続けている。ところが、懸命のサインを聞き取るべき飼い主は現れるどころか、気配すらない。
 ここは福島第一原発から約45キロにある福島県飯舘村。事故で飛散した放射能に汚染され、村民は昨年6月から例外を除いて避難させられている。
 村内ではパトロール車両とすれ違った。立ち入りが禁じられている30キロ圏では空き巣が相次いでおり、村を守るために警戒は怠れない。(写真は、3月10日福島飯館村で)

▼「帰る」か「新たな村」か

 民家の玄関先で雪かきしている女性がいた。週に数回来て、様子を確かめているという。「戻れたときにきちんとしておかないと」と言いながら、スコップで雪を除いていた。

 村民の帰村への思いは強い。仮役場がある福島市飯野支所を訪れた人も「いずれ帰る」と口にし、菅野典雄村長も「2年で帰る」と決意している。一方、高原野菜の専業農家である菅野哲さんは3月11日の福島県民大集会で訴えた。

 「路頭に迷った住民の意向を何一つくんでいない。安全で安心して暮らせる新たな避難村を建設して」

▼ひきこもる避難者

 同村と接する川俣町の農村広場にある仮設住宅に向かった。やはり避難している山木屋地区の住民約360人が暮らしている。

 160戸の住宅は新しく、コンビニエンスストアも備わっている。だが、人の往来は極端に少なく、雪なのに洗濯物をつるしている家も。何とか一人の80歳代の女性から話を聞くと、「近ごろは外に出ていない。あんまり眠れねえし」とうつむくばかりだった。

▼公表線量をオーバー

 避難していなくても、見えない放射性物質と隣り合わせの県民もいる。

 郡山市の市街地にある公園は、昨年6月に線量が高いことがわかり、子どもは遊ぶことが制限された。市は除染を続け、大手メーカーの線量計も敷地に設けて、今では小学生の女の子が犬の散歩をしていた。線量は1時間当たり0・6~1・4マイクロシーベルト(μSv)という。

 ところが、携帯していた線量計を生垣の下に置くと9μSvで、飯舘村でも目にしなかった値だった。市は高さ50センチの場所で測っており、単純に比べられないが、少なくとも除染には限界があるようだ。

 市内の線量はバックグラウンド(自然界の放射線)を優に上回っていた。見方はさまざまだろうが、市民がこうした環境のなかで生活していることだけは確かだ。


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