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2012年 3月 2日

「早く働けと言うだけ」が5割
 「働ける」世代の生活保護の実態調査

就職難なのに就労指導は手薄 

 生活保護利用者が過去最高を更新し続けるなか、利用者に適切な就労支援が行われていない実態が明らかになった。北星学園大学の木下武徳准教授が2月24日、稼動年齢層(16─64歳)の利用者の実態に関するアンケート調査の結果を公表。それによると、ケースワーカーによる就労指導は「早く働け」と促すだけという回答が5割にも上っている。

 生活保護とは、病気や失業などで生活が困難な世帯に対し国が最低限度の生活を保障し、自立を促す制度のこと。昨年11月時点の利用者数は約208万人で増加が続いている。

 こうした現状に国と地方は、「働ける世代」に対し職業訓練の受講を条件に月額10万円の生活費を支給する「求職者支援制度」の義務付けを検討している。制度を正当な理由なく拒否すれば、保護の打ち切り措置も行う。

▼半数以上が失業1年超 

 木下准教授が昨年6─10月に行ったアンケート調査では、全国の利用者897人の回答を集計。「働ける」とされる利用者たちの実態を明らかにしている。これだけの規模の調査は日本初という。

 アンケートでは、保護利用者が多くのハンディを抱えている現状が改めて浮き彫りになった。43%の人が求職活動中で、うち半数近くがハローワークなどで週3日以上の求職活動を行っている。それでも「求職期間が1年以上」という長期失業者が56%もいた。

 就職が困難な理由(複数回答)は、「年齢が(高くて)不利」が56・2%で最多。次いで、「病気」「仕事に見合う能力がない」「学歴がない」が続く。大阪府の女性は「学歴や資格、自動車免許、経験などを理由に雇ってもらえない」。大阪府の男性は「これまで100社以上応募。仕事を見つけても日雇いや3カ月以内の仕事が続いている」と漏らした。求職活動をしていない理由(同)については、「病気」と「障害」が多数を占めた。

▼保護打ち切りは「行き過ぎ」

 一方、就労支援が不十分な実態も明らかに。全体の35%がケースワーカーから「就労指導を受けている」と回答したが、その内容を尋ねる(同)と半数以上が「とにかく早く働け」と言われただけだった。愛知県の利用者は「ケースワーカーに相談しても『頑張って探してね』と言われるだけ」。千葉県の男性は「就職支援面談で無料の求人雑誌を見せられただけ」と打ち明けた。

 就労支援に関する要望(同)では、68・2%が「親身な相談」を希望している。山口県の女性からは「ケースワーカーが刑事のような聞き取りで、相談どころではない」との苦言も。このほか、「行政による仕事の提供」や「就職のための資格取得」の支援などを求める声が目立った。

 調査結果について木下准教授は「国は就労を強調するが、適切な就労支援ができていない」と指摘。国と地方が「働ける」とみなした利用者に対し、求職活動を拒めば保護の打ち切りを検討していることには「明らかに行き過ぎだ」と強く批判した。

 そのうえで、「どうしても働けと言うなら、行政が就労の場を確保すべきではないか」と述べ、利用者目線で保護制度を抜本的に改善することを訴えた。


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