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2012年 6月26日

風評ではなく実害そのもの 
〈福島レポート〉放射線拡散から1年3カ月

川俣町から南相馬市へ/汚染された土地を巡る  

 福島県南相馬市小高区のJR常磐線「小高駅」の駐輪場に、およそ230台の自転車がある。持ち主はほとんどが最寄りの小高駅を利用する通学生。その多くはさびたハンドルにツタが絡まったまま放置されている。東京電力福島第一原発の爆発で拡散した大量の放射能が降り注ぐなか、何が起きたのか分らず避難したのだ。今年4月16日に警戒区域が解除されたものの、自宅には寝泊まりできない状況が続いている。(写真・3.11から放置され続ける高校生の通学用自転車)

▼駐在所も空っぽ

 東日本大震災からほぼ1年3カ月が過ぎた3月8日、福島市から車で 南相馬市に向かった。国道114号線沿いの伊達郡川俣町大清水にある山木屋駐在所前で、白い防護服と防護マスク姿の一団に会った。放射能に汚染された水田にゼオライトなどの固化剤をまき、表土を数センチ剥ぎ取る除染作業員だ。汚染土を詰めた黒い袋がずらりと並んでいた。

 無人の駐在所の庭に置いた放射線量測定器を見ると、毎時1・015マイクロシーベルト(μSV)。もちろん、道路を挟んだ民家に人気はない。

▼ふっ切れた線量計

 全町民が避難する浪江町の山間部にある津島地域では、車内の線量計が毎時4・5μSVを指した。そこから国道399号線で峠を越えて飯舘村へ向かい、浪江町赤宇木の塩浸(しおびて)に延びる三叉路に車を停める。外に出て測ると、空間1メートルの高さで16・0~17・5μSVを指している。

 山側の土の斜面に線量計を当てた。すると、19・99μSVで止まったまま動かない。

 線量計を持参し同行してくれた福島生協労組の後藤剛志書記長は、「この線量計は20μSVまでが限界。それで針が吹っ切れた」と教えてくれる。針が吹っ切れる状態は、飯舘村に入る手前の下り坂でも同じだ。

 福島第一原発が水素爆発を起こした昨年、福島県浜通り地方の浪江町や南相馬市の住民は、この山木屋、津島、長泥を通る国道に大量の放射能が流れ込んでいることを知らされず、車で殺到した。後藤書記長は「この地域には、今も誰も住めない。東電福島第一原発がある双葉郡と同じで、風評被害どころか実被害そのもの」と語気を強める。

▼住民の苦悩
 
 原発の事故で、南相馬市小高区に住んでいた1万2800人は一人残らず避難した。国は今年4月16日、帰還困難区域(年間50ミリシーベルト以上)を除き出入りを自由にしたが、水道は地震や津波で止まったままだ。そのため一時帰宅する住民は、水をペットボトルに入れ仮設住宅から運んで来る。だが、荒れ放題の部屋の家具類を片付けて掃除しても、それを持ち運ぶ仮置き場がない。

 放射能汚染の警戒区域は、国の責任で除染することになっている。しかし、除染に欠かせない仮置き場の確保や具体的な作業計画はこれからだ。そうした中で、腐った生ごみさえ自宅に保管せざるを得ないなど、住民の苦悩が続いている。

 小高駅から西方角に延びる商店街がある。住民が仮設住宅へ引き上げた夕刻だからか、行き来したのは3台の車と母娘の2人。その商店街で聞こえた「声」は、活気を取り戻そうと流しているらしい若者向けのCDソングだけだった。 (川島左右喜)
                                                              

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