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2012年 6月12日

社長、利用者の声に向き合わず 
〈東電値上げ公聴会の傍聴記〉

「総括原価方式」で電力会社の利益守る 

 東京電力が「7月から家庭向け電気料金の平均10・28%値上げ」を国に申請中だ。経済産業省が6月7日に省内で開いた公聴会を傍聴したが、西沢俊夫社長は「お客さま」からの批判や疑問にまともに答えようとしなかった。

 公聴会は経産省が値上げの可否を決める材料にしようと開催。一般から陳述した10人と西沢社長ら東電経営陣とのやり取りを聴いた。

 最も印象的だったのは、8人目に意見を述べた東電OBの鈴木章治さん(71)。現役当時に原発の危険性を訴えたために会社から差別的待遇を受け、裁判に及んだ経験があるという。

 「原発事故で生活を根底から覆されて、今も家に戻れずにいる人がいる深刻さを直視しているのか」

 鈴木さんは社長に視線を向けて語りかけた。料金計算の前提に「来春の柏崎刈羽原発の再稼働」が盛り込まれた点を挙げたのだ。

 東電は「値上げ分は再稼働で下げることが可能」としているが、鈴木さんは「安全神話に固執して反省も一切していない」と批判。「国がエネルギー政策を決めている段階で再稼働というのは、原発依存の先取りになる」といさめた。

 鈴木さんは、東電が再生可能エネルギーの導入に消極的なことも嘆いた。

 「なぜ、わざわざ遠くから高い電圧をかけて電気を家庭に送るのか。電圧を下げるために設備がいるというのは企業の理屈。どうして近くで地元と一緒になって電気をつくる取り組みをしようとしないのか」

 この問いかけの最中、社長は鈴木さんに一度も目を向けようともせず、終始下を向いたまま。司会者からコメントを求められると、

「事故原因の究明は有識者検討会で詰めている。再稼働は安全と地元の理解が大前提」と、それまでの陳述人への答えをオウム返しに述べるだけだった。

▼自分が一番やる気なし?

 陳述人の多くが指摘したのは、やはり電気料金を決める仕組みの「総括原価方式」。電力会社は年間コストを事前に見積もり、それに応じた料金を回収できる。コストには事業報酬と呼ばれる項目もあり、原発などの大型施設を建てて運転すると報酬も高くなるようになっている。陳述人のなかには、公表資料を元に矛盾を突く質問も。彼らはしっかり勉強して臨んでいるのだ。

 だが、社長は「貴重なご意見をありがとうございます」と言いつつも「料金の仕組みを分かりやすく説明していきたい」と抽象的に答えるばかり。それは、料金の新プランで「夜間料金を安く」とうたいながら、申請では夜間の値上げ率の方が昼間のそれよりも高くなっている点でも同じだった。

 社長はボーナス中止など人件費削減を求める声には「社員の士気を落とせない」と反論した。彼は今月の株主総会での辞任が決まっている。公聴会での声にまともに応じない様子を見る限り、モチベーションを最も失っているのは社長ではないかと感じた。 


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