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2012年 11月16日

どこへ行く?大飯原発断層調査 
稼働停止は時間の問題か

活断層化地すべりかで結論左右

  関西電力大飯原発の断層(破砕帯)について活断層かどうかを調べている原子力規制委員会の有識者チームが、判断先送りと追加調査を決めた。なぜ結論を出せないのか。ポイントを解説し、今後の行方を占う。

▼調査の目的/本来は「グレー」も停止/本来は「グレー」も停止

 地中のひびである断層のうち、活断層は近い将来に地震を起こす恐れが高いものを指す。言い換えれば「比較的新しい時期」で繰り返し動いた断層の跡があれば活断層となる。旧原子力安全・保安院はこの「時期」を「12~13万年前」と定義してきたが、規制委の有識者チームは、国の地震調査研究推進本部の目安に従って「40万年前」までさかのぼることにした。

 活断層の地震は、地表をずらして施設ごと壊しかねないので、国は原発の「耐震設計審査指針」で活断層の上に重要施設を建てることを認めていない。指針は「(活断層の)可能性が否定できないものは考慮する」とし、指針に基づく「安全審査の手引き」にも「断層運動が原因であることが否定できない場合、活断層を適切に想定する」とある。

 大飯の調査では、敷地を南北に貫く「F―6断層」が焦点だ。F―6の真上には非常時に冷却水を取り込む配管が横切っており、規制委は活断層ならば稼働する3、4号機を止めるよう求める方針だ。もっとも、指針や手引きの趣旨に沿えば、活断層であると否めない、すなわち「グレー」でも停止を求めるのは間違った判断ではない。

▼意見対立の背景/なぜ「地滑り」に執着?  
 
 有識者チームは地震や活断層の学会推薦を受けるなどした5人でつくられ、11月2日には現地を調査した。同4日の会合では、敷地北側で見つかったF―6とみられるV字型の地層のズレが「12~13万年前以降に起きた」という点で一致。時間軸で見ると、活断層の疑いは強まった。

 しかし、ズレの原因をめぐりメンバーは対立。渡辺満久東洋大教授は「明らかに活断層」と主張し、岡田篤正立命館大教授は「地滑りでも生じる」と反論。広内大助信州大准教授は渡辺氏に味方したが、産業技術総合研究所の重松紀生主任研究員は、岡田氏の側に付いた。

 チームをまとめる島崎邦彦規制委員長代理は、7日に関電の意見を聴いて判断しようとしたが、かえって結論は出しにくい事態に。関電は、提出資料でF―6の予想位置を従来とは変えたのに、渡辺氏が指摘するまで説明せず、一方で活断層を否定する主張は曲げずに岡田氏の地滑り説を支持したからだ。

 関電にとっては、活断層とみなされれば大飯は止まり、他の原発の再稼働も難しくなる。福島の事故以前は発電量の4割を原発に頼ってきただけに、長期停止は即経営危機だ。逆に地滑りとされれば、ズレの現場は重要施設の真上ではないので、そこを補修すれば運転は続けられる。
 
▼再調査と今後は?/ずるずる先送りの恐れも

 結局、意見の溝が埋まらず、島崎氏は「データが足りない。一致してこうなるという結論がほしい」と判断を先送り。関電に追加調査を指示した。

 追加調査は、活断層か地滑りかをはっきりさせるために、ズレの現場近くで新たな溝(トレンチ)を掘る。F―6の位置をつかむべく原子炉建屋の南側も掘ることにした。島崎氏は「重要な材料が見つかれば、会合を開く」と言うが、追加調査の終了は早くても1カ月ほどかかるため、結論は越年しそうだ。

 こうした対応に、渡辺氏は「危険性がある以上、スピード感をもって判断すべき」と指摘。会合の傍聴席からも「グレーならば止めろ」と批判が上がった。

 地震学者である島崎氏は、規制委の発足時に「3・11の前に福島に大津波が来ると予測しながら発表できなかった」と後悔の念を明かした。調査会合でも「地滑りは直感的に難しい」と発言しており、調査の範囲を広げれば「一致してこうなるデータ」が得られると考えているようだ。規制委の断層調査は今回が初めてで、結論を出すプロセスを誤れば、原子力規制の全体に差し支えかねない。慎重を期すのは仕方ない面もある。

 だが、一致できるデータが見つかる保証はなく、仮に出ても岡田氏や関電が「新見解」を持ち出してあらがうかもしれない。そうなれば、ずるずると議論が長引く展開に陥るだろう。経営危機を避けたい事業者らに対し、「科学的な判断」(島崎氏)をまっとうできるのか。「政治経済の介入を許さない」と唱えてきた規制委の本性はもうすぐ明らかになる。(連合通信)
                                        

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