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2012年 9月21日

消費税増税で派遣労働者が増える!? 
物価上昇など働く者は3重苦に 

派遣は物品税扱い

 消費税の税率が上がると派遣労働者が増える?

 「風が吹けば桶屋がもうかる」話のように聞こえるかもしれません。でも、消費税の仕組みをよく見てみればウソではないのです。
▼手っ取り早い節税策

 元静岡大学教授で税理士の湖東京至さんはこう指摘しています。

 「消費税を納める企業は、売上高に5%をかけた額から仕入高に5%をかけた額を差し引いて税金を計算します。これが仕入税額控除方式です。仕入高には交通費や家賃、機械の購入代金などの経費が含まれます。ところが人件費は控除対象になりません。人件費の大きい企業は消費税の納税額が大きくなります」

 「経営者にとって一番手っ取り早い節税方法は、正規労働者を減らし、その分を派遣や外注でまかなうことです。これらは控除対象になりますから、収める税額が減るのです」(『マンガ解説「消費税増税」どくまんじゅうにご用心!!』連合通信社発行) 
 消費税を節税しようと思えば、派遣や外注を増やせばいいということです。

▼派遣は物件費扱い
 
 計算してみましょう。

 売上高1000万円の企業で、経費300万円、年収300万円の従業員が2人いる会社があります。消費税額は、売上高から経費を引いた700万円の5%ですから35万円です。

 この会社が2人の従業員を派遣労働者に置き換えたとします。すると、税額は売上高から派遣料金を含む経費900万円を引いた100万円の5%、つまり5万円となります。

 30万円の節税です。

 派遣労働者の賃金は人件費ではなく、物件費扱いになるというのがミソ。派遣労働というサービスを購入したとして、税額控除の対象になるのです。

▼社長に悪魔のささやき
 
 今は5%の消費税が今後8%、10%になったらどうなるでしょうか。

 景気が悪くて企業経営に四苦八苦している経営者にとって、消費税額の負担増は耐えがたいもの。デフレの世の中では、製品やサービスの料金を値上げすることが困難だからです。結局は会社の負担分が増えることになります。

 こういう経営者が「派遣を使えば節税できますよ」「従業員を減らして外注に出しましょう」と誘惑されるのです。悪魔のささやきであり、消費増税をきっかけにして、全国でこういう誘惑が広がります。

 実際、年間売上高が1億円未満の会社にとって、200万~300万円の消費税額の支払いは大変です。特に赤字経営の場合は、日常の資金繰りを圧迫します。「今でも厳しいのに、税額が2倍になったらもうやっていけない」――そんな声も聞こえてきます。

▼働く者に3重苦
 
 3年前の政権交代の背景には、「年越し派遣村」に代表されるような、貧困と格差をなんとかしてほしいという国民の切実な願いがありました。

 ところが、派遣法の抜本改正は行われず、小幅見直しにとどまりました。加えて、消費税率の引き上げが決められました。派遣労働は規制されるどころか、消費増税によって拡大する恐れが出てきたのです。

 働く者は消費増税で3重苦を背負います。一つは生活費の増加。二つは、価格に増税分を上乗せしにくい中小企業などで進む経営悪化。人員合理化が心配されます。そして三つ目が派遣労働への置き換えです。  

 消費増税は働く者を直撃するということです。                                              

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