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この編集体制では起きて当然 |
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基本怠り、言論の自由狭める |
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週刊誌「週刊朝日」が橋下徹大阪市長の出自に関する連載記事を出し、発行元である朝日新聞出版の社長が11月12日に辞任する事態となった。この日発表された第三者機関の見解を同じ報道に携わる立場から読むと、人権意識もさることながらあまりに拙い編集体制の実情が見えてくる。 週刊朝日は10月26日号の連載記事で、被差別部落を特定した上、「親戚」をネタ元とする橋下氏の実父(故人)の行為を挙げて同氏を侮辱した。批判を受けて連載は1回で中止され、編集長や担当デスクは更迭。親会社の朝日新聞社の第三者機関「報道と人権委員会」は問題を検証し、このほど見解をまとめた。 見解は「出自を根拠に人格を否定するという誤った考えを基調としている」と手厳しい。差別を助長する記事はもってのほかであり、橋下氏の朝日新聞関連の取材拒否に「新聞と別媒体」と言い訳したのもまともな事後対応ではない。 ▼企画書もつくらずに 一方、それと同じぐらいあきれたのが編集体制そのものだ。「目玉企画」として掲載の半年前から提案していながら、部内で企画書もレジュメもコンテもつくっていなかったという。報道の世界では、連載は企画を練り上げ、検討を重ねていくのが常識。創刊90年の伝統ある媒体とは思えない怠慢だ。 担当デスクが、執筆者のノンフィクション作家佐野眞一氏から原稿をもらい、「秘匿すべき情報提供者の名前が入っていた」として3日間も手元に置き、締め切り前日に編集長へ渡したというのも驚く。記事によって何らかのトラブルが生じれば、責任を取るのは編集長だ。その人に背景や事情を知らせずに載せられるとデスクが考えていたとしたら明らかに失格。「目玉企画」ならば、編集長は1週間前に目を通すのが普通で、そのような段取りで出てきた原稿を手直しで了とした編集長はそしりを免れない。 ▼お粗末な原稿チェック 週刊朝日ほどの規模を持つ編集部で、原稿チェック専門の副編集長がいなかったのも異常だ。記事の誤りをなくすには、限られた編集時間で可能な限り多くの人のチェックを入れるのは当たり前。編集長と担当デスクだけのやり取りだったため、「他の週刊誌も書いているから」という思い込みに陥ったのだ。 新聞社や大手出版社が発行するニュース週刊誌は、近年販売が落ち込み苦境にある。挽回しようと「目玉企画」を立てたのは理解できても、お粗末過ぎるプロセスで出した記事は、かえって週刊朝日の評判を落とし、第一線のノンフィクション作家も打撃を受けた。何よりも深刻なのは「言論の自由」への悪影響だ。連載中止によって、権力側が分の悪い報道はあらゆる手段でつぶせるという前例をつくったばかりか、差別に立ち向かう取材をより難しくしてしまった。(連合通信) |
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