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2012年 6月26日

ニコンに「開催」を命令 
東京地裁

従軍「慰安婦」の写真展中止問題  

 中国に残された朝鮮人元日本軍「慰安婦」の写真展が中止された問題で、東京地裁は6月22日、写真展の会場を運営するニコンに対し、予定通りの日程で施設使用を命じる仮処分命令を出した。

 申し立てていたのは韓国人写真家・安世鴻(アン・セホン)氏(41)。光学機器メーカーのニコンが運営する写真ギャラリー・新宿ニコンサロンで6月25日~7月9日の期間に写真展開催の使用承諾を受けていたにもかかわらず、5月22日に突如ニコン側から明確な理由もなく写真展の中止が告げられた。背景には右翼勢力からの抗議があったとみられている。

 安氏は判決後の記者会見で「表現の自由を守った妥当な判断」と評価しつつ、「今回の挑戦は写真家全体への挑戦だと思う」とも語った。弁護士の李春煕(リ・チュニ)氏は、決定に基づきニコンに会場の使用を認めるよう求めた。

 ニコン側は写真展中止の理由を一貫して「諸般の事情による」としていたが、裁判のなかでは写真展が「政治活動の一環であることが判明したため」と弁解した。しかし東京地裁は、安氏が政治活動の場として写真展を利用しているとは認められないとし、たとえ写真の内容が政治性を有していても、「写真文化の向上」と明記されたニコンサロンの規定に矛盾しないと判断した。安氏も記者会見で「私は平和というテーマで撮影しているので、政治的か否かは写真を見る人が決めること」と述べた。会見場にはフリーで活躍する森住卓氏、豊田直己氏らジャーナリストたちの姿もあった。

 ニコンは、仮処分命令に対し異議申し立てを行う予定だ。

 安氏は今後も各地での写真展や講演会を続けながら、2013年には欧米でも写真展を予定している。

圧力には毅然とした対応を「表現の自由」に危機感/連合通信写真部長 亀井正樹

 ニコンサロンでの写真展は著名な写真家らの審査を経て開催が決まる。新人の登竜門的役割もあり、ドキュメンタリー作品を大切にするギャラリーとして評価も高い。

 ニコンは安氏の作品が「政治活動の一環であることが判明」との理由を付けたが、過去にもイラク戦争、ベトナム戦争、貧困問題、高齢化問題など政治性の強い作品はあった。

 私自身も2008年3月にベトナム戦争での枯葉剤被害者をテーマにした個展を新宿ニコンサロンで開催した。あいさつ文では作戦を指揮した時の米国政府を批判したが、ニコン側からは何ら注文は付けられなかった。

 中国に残された朝鮮人「慰安婦」の写真展開催が公表されると、「在特会」(在日特権を許さない市民の会)など右翼勢力のサイトでの誹謗(ひぼう)中傷の書き込みが急増。安氏の個人情報までがネット上に公開され、自宅への無言電話や脅迫の手紙なども送られたと同時にニコンへの抗議が始まった。

 こうした経過をみれば、写真展中止は明らかに不当な圧力に屈したものといえる。
 映像に携わる世界的企業であるならば、日本国憲法で保障された「表現の自由」に対する不当な要求や圧力、とりわけ自分たちの思想に合わないものを排除しようとする動きには毅然(きぜん)とした対応が求められる。

 今回の問題では「国境なき記者団」(本部フランス)などヨーロッパの写真家らが署名入りの抗議文をニコンに提出した。残念ながら、日本ではJVJA(日本ビジュアルジャーナリスト協会)以外の写真家協会、団体、ジャーナリスト組織の動きが全く見えない。「表現の自由」はお題目ではない。日本で声も上げようとしない状態が心配だ。

                                                              

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