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2012年11月 13日

社会保険料の別枠確保を要求
全建総連の東京都連など  

事業者の加入逃れ防ぐ目的 

  社会保険加入を徹底することで若者の建設業離れを食い止めようとする国の方策に対し、中小零細の建設業者が悲鳴をあげている。工賃や単価の下落で保険料を負担する余力がないためだ。このままでは社会保険加入逃れのための「外注化」が一層進む恐れがある。首都圏の建設労組は、発注元に社会保険料負担分をきちんと支払わせるため、全体の発注額とは別枠で確保するルールの整備を求めている。

▼産業の土台崩す

 国土交通省は昨年まとめた「建設産業の再生と発展のための方策2011」で、重層下請け構造やダンピング入札競争の是正に加え、「社会保険未加入企業の排除」を打ち出した。全産業と比べて低い建設産業の加入率を引き上げ、若者の建設業離れを食い止めようという試み。今年7月に発表した「方策2012」でも、2017年度以降「100%加入」を掲げ、「悪質」な事業者を市場から排除する姿勢を示した。既に国の方針を先取りする形で未加入業者を現場から排除したり、建設業許可の更新を拒否するなどの事例が出ているという。

 厚生年金など社会保険への加入はそこで働く人の安心確保のために大切な課題であることは間違いない。だが、皮肉なことに、建設業の現状では働く者がより不安定になるというマイナスの影響を、全建総連東京都連の田口正俊書記長は指摘する。

 というのも、工賃や単価の下落が進み、中小零細建設業者はとても社会保険料を支払う余力がないためだ。実際、国が都道府県ごとに標準的な労務費を示す「公共工事設計労務単価」は、1997年から15年間で7割の水準に低下している。
 そこで心配されるのが社会保険加入逃れのための「外注化」の進行だ。近年の建設産業の苦境で、「16歳の一人親方」という極端な事例も報告されており、外注化に拍車がかかることが予想される。

 こうした弊害を防ごうと、全建総連東京都連や首都圏の建設労組でつくる実行委員会は、発注企業が下請け企業に対し、社会保険加入に必要な経費増加分を別枠で支給する発注ルールの整備を求めて動き始めた。下請け企業からすれば、社会保険料のための法定福利費が、材料費や労務費など他の経費と併せてどんぶり勘定で支払われると、社会保険加入のための経費がきちんと上乗せされたかどうかわからないためだ。

 問題は下請け業者が必要な経費を確保できないこと。末端の業者を締め付けるだけでは、解決が期待できないどころか、働く者に真っ先にそのしわ寄せが及んでしまう。ゼネコンなど発注者に責任を負わせるための制度整備が必要だ。

 実行委は9、10月、関東地方にある135の建設業団体に要請や懇談を行い、多くの賛同を得られたという。今後、ダンピング競争の是正や、設計労務単価の見直しなどとともに、国や国会議員への働きかけを強めていくとしている。

〈用語解説〉公共工事設計労務単価

 国が公共工事を積算するために示した、標準的な労務費。都道府県、職種ごとに毎年更新されます。前年実績を元にするため、年々低下傾向にあります。

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