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2012年10月29日

「憲法の精神でILO活動を」
国際シンポで提起  

専門家委員会の横田洋三さん 

 「日本は、日本国憲法前文の精神でILO(国際労働機関)の取り組みを進めてほしい」

 ILOで条約勧告適用専門家委員会委員長を務める横田洋三さんは、10月25日に開かれた国際シンポジウムでこう提起した。ILO駐日事務所などが開いたもので、ディーセントワーク(働きがいのある人間らしい仕事)を日本でどう実現するかがテーマだ。

 条約勧告適用専門家委員会は、条約が正しく反映されているかについて加盟国が出す報告書を審査するのが主な任務である。横田委員長の発言は、要旨次の通り。

                                   ○

 日本は、189ある全条約の3分の2以下しか批准していない。特に重要な中核的労働基準にかかわる8条約についても、2つが未批准。強制労働を禁じた105号と差別待遇を禁じた111号は、ほとんどの国が批准しており、日本は急いでほしい。

 批准済みの条約についても、同一価値労働同一報酬や消防職員の団結権など、いくつかの点で世界の大勢に遅れている。むしろ、世界にモデルを示す国になることを望む。

 さらに言えば、日本は新しい基準設定で世界に貢献できる。昨年の東日本大震災を踏まえ、大規模な自然災害が起きたときに労働者の安全や雇用をどう守るのか、原発事故における労働者の安全と健康をどうするのかなど、今後ILOでテーマになるだろう。そのときに役割を果たしてもらいたい。

▼貧困問題を放置するな

 世界でディーセントワークを実現する課題もある。特に途上国への協力の問題だ。ILOの原点であるフィラデルフィア宣言は「一部の貧困は全体の繁栄にとって危険である」と指摘している。世界の貧困問題に取り組むことは、日本の繁栄にとっても重要だ。

 この点で、日本国憲法の前文を改めて紹介したい。 

 「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」

 「全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免れ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」 

 「いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならない」

 日本はこの精神をILOの取り組みに結び付けて、行動に移してほしい。

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