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雇用の流動化、労使にマイナス |
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脇田滋・龍谷大学教授に聞く |
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「40歳定年制を導入」「労働契約は『有期』を基本にする」――。国家戦略会議(議長=野田佳彦首相)のフロンティア分科会が7月6日、こんな報告書をまとめました。雇用の不安定化を狙った経営側の欲望があからさまに出たものです。その内容について龍谷大学の脇田滋教授(労働法)に話を聞きました。 ▼「40歳定年」は本末転倒 経営側は、解雇規制や労働者派遣事業の緩和を一貫して求めてきました。2006年以降の偽装請負問題や08年秋のリーマンショックが相次ぎ、しばらくは、本音を押し殺していましたが、民主党政権の「裏切り」で再び表に出てきました。 終身雇用が崩れるなかで、新たな雇用政策として打ち出したものでしょうが、「40歳定年制」の導入は企業にとってもリスクが高いことを忘れています。 早期定年制は短期的視点しかなく、雇用の質を考えていません。大学でも早くポストを引き継がせようと「早期退職制度」が実施されたことがあります。しかし、能力のある人ほどすぐに辞めてしまい、退職金を「食い逃げ」される現象が起きました。本末転倒な結果になるだけです。 ▼「働き過ぎ」の是正を 労働契約の有期化は、期間が満了すれば理由なく解雇ができることが狙い。言わば「解雇がくっ付いた雇用」です。導入されれば、労働者は(1)将来の展望が持てない(2)言いたいことが言えない無権利状態に陥る(3)差別待遇が容認される――など賃金や労働条件まで切り下げられてしまいます。 「国際競争力を強化・維持するため」と言いつつ、フランスやドイツ、韓国では当たり前の派遣労働者の「差別禁止」を日本は定めていません。悪い例だけ海外から取り入れるのは経営側の身勝手そのものです。 一方で、「就職難に苦しむ若者の雇用問題はどうするのか」との指摘もあります。解雇規制を緩めるのではなく、過重労働の改善に取り組むべきです。残業をなくすだけで500万人分の雇用が生まれる試算もあります。有給休暇の消化促進も必要です。イタリアでは憲法で「年休の権利は放棄できない」と定められ、過労死する働かせ方は「野蛮である」と受け止められています。日本も見習うべきでしょう。 報告書は、個別企業の経営にプラスになることはあっても日本全体には大きなマイナスにしかなりません。 |
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