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2012年 6月 8日

「外見悪ければ降格あり得る」
プラダ裁判 証人尋問メモ(下) 

社長の女性軽視が明らかに 

 プラダジャパンのダヴィデ・セジア社長は、6月1日に東京地裁で開かれた第2回証人尋問に、黒のスーツに白いワイシャツ姿で出廷した。ネクタイの結び目はとても小さく、やや猫背で、証言席から数メートルほど脇に座るボヴリース里奈さんとは目を合わせようともしない。ボヴリースさんが社長に厳しい視線を向けているのとは対照的だ。

▼日本語話せるのに…

 社長は「偽りを述べない」とする宣誓から尋問終了までイタリア語を通した。プラダ側は、今回の事件が社長のコミュニケーション不足によるものとアピールしたいようだ。ただ、来日20年とあって、通訳が意図と違うと思われる内容を伝えようとすると、すかさず口をはさむ。「相手が日本語をしゃべるならそうしていた(同じ言葉を使っていた)」からこそできるのだろう。

 肝心の証言内容は、覆い隠せないほどボロが出た。

 2009年9月29日のセクハラ発言については、「やせる努力をしてほしいと言った。彼女(ボヴリースさん)にとっても有益と感じたからだ」と主張。しかし、彼女の弁護士から、09年に関西の女性店長を「消す」ように指示した社長のメールにあった「keep good shape」の記述を示されると、「接客に影響する外見を含めたパフォーマンスが悪ければ降格もあり得るということだ」と発言。「外見で差別しない」とするプラダグループの倫理規定に、自ら反する行動を取った事実を認めてしまった。

 弁護士は追い討ちをかけた。07年の雑誌の対談で「イタリア男は女の外見をあれこれ言うもの」と語った後、アダルトビデオを例に挙げながら女性の仕草を分析する持論を述べていたと暴露したのだ。これにはさすがに冷静を保っていた社長も「雑誌はフィクション。私にはそのまま当てはまらない」と懸命に弁解したが、裁判官の心証は相当に悪くなっただろう。

▼降格後の処遇考えず

 強制販売に対する追及でも、社長は守勢に回った。

 09年1月に店舗スタッフにバッグを15万円以上買わせた指示は「自発的に買ってくれたらうれしいと言った」だけなのに、「売り上げ目標は1200万円」と妙に具体的。スタッフの平均年収を「320~350万円ほど」と把握していたから、商品購入が彼女らの生活を苦しめることを十分認識していたのだ。

 8月の強制販売の店舗連絡を人事部長に一任したのも「直接の担当よりも強制にならないと考えた」。すかさず弁護士に「人事権を使った圧力では」と問われると、「部長はデリカシーを持っていると信じていた」と説明に四苦八苦した。

 人事の扱いが稚拙であることも分かった。09年10月13日に、ボヴリースさんへ降格を口頭で伝えた件では、「その後の処遇は考えていなかった」と断言。「解雇の意思はなかった」というプラダ側の主張をわざわざ覆してしまった。

 極めつけは、最後に質問した森岡礼子裁判官とのやり取りである。

 森岡裁判官 「プラダジャパンでは、役職を変えるのは口頭か文書か」

 セジア社長 「口頭のときだけのこともある」

 労働契約法第4条の2は「労働者及び使用者は、労働契約の内容について、できる限り書面により確認するものとする」と定めており、第8条では「労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる」とある。ボヴリースさんは5月25日に同じ法廷で「採用時に示されたのは内定通知書だけ。ほかの契約書類は労働審判のときに初めて見た」と証言している。

                                  ◇

 社長の尋問終了後、森岡裁判官は和解勧告を出す意向を明らかにした。だが、ボヴリースさんは連合通信の取材に対し、「どんなに有利な和解案が出ても拒否します。尋問によって勝訴判決が出ると確信したから」と語った。

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