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2012年 6月 7日

セクハラと強制販売が常態化
プラダ裁判 証人尋問メモ(上) 

会社ゆがめた社長の指示 

 セクハラ解雇と店舗スタッフへの強制販売はやっぱり本当だった!イタリア高級ブランド・プラダの日本法人「プラダジャパン」と元部長のボヴリース里奈さん(38)らが争う裁判の証人尋問で、同社のあきれた実態が明かされた。

▼「らしさ」はユニクロ?

 ボヴリースさんは2009年4月、店舗の運営や売り上げを担当するリテールオペレーション部長として入社したが、9月29日にイタリア人のダヴィデ・セジア社長から人事部長の口を介して「君の醜さが恥ずかしい」などとセクハラを受け、11月に事実上クビにされた。

 翌年春、東京地裁に地位確認と慰謝料を求めて訴えると、会社は逆にボヴリースさんを「名誉棄損」で提訴。さらに地方店の元女性副店長が「不当に降格を迫られ退職させられた」と会社を訴えた。各訴訟は激しい対立で長引き、開始から2年越しで証人尋問にたどり着いた。

 5月25日の第1回尋問に臨んだボヴリースさんは、白いシャツとロングスカートの清楚な姿で、どう見ても「醜い」というのは当たらない。「髪形を変えろ。君はやせろ。プラダの部長としてふさわしくない。君の醜さが恥ずかしい。君をイタリアからの来客に絶対会わせたくない」という社長の言葉(9月29日)を浴びせられた時の心境を聞かれると、涙声になった。

 「(ファッションの)仕事が好きで頑張ってきたのに、職務能力ではなく、髪型や体型といった外見で仕事を評価された…」
 ボヴリースさんは9月初めにも「髪が手入れされていない」「服装を(競合ブランドの)シャネルではなくプラダらしくしろ」と告げられたが、その具体的な服装として挙がったのは、なぜか「ユニクロ」。一方で、髪を銀色に染めてシャネルのジャケットを着た男性社員は、おとがめなしだったという。

▼クビの合言葉は「消して」

 解雇のてん末はこうだ。彼女がイタリア本社のトップにセクハラの事実を伝えると、社長は「10月2日夜の電話で『許してくれ』と泣いていた」。ところが、本社トップを交えた3者会議から間もない13日、社長は降格を口頭で伝えた。彼女がストレスによる病気で出社できなくなると、会社は「無断欠勤」とみなし、翌月4日に出社した際に人事部長は「あなたの仕事はない」と告げた。

 不当解雇は店舗の女性スタッフの身にも起こっていた。社長は視察した店長らの容姿が気に入らないと「消して」と人事部長に命令。ボヴリースさんは「老けて太っている」との理由で「消されそう」になった店長の実績をアピールして何とか守ったいきさつも明かした。前出の元副店長も「消す」の対象だった。

 本社の女性社員もむごい仕打ちを受けていた。ボヴリースさんの部下だった女性は、イタリア語が話せたばっかりに社長の「サンドバッグ」となり、ある時はささいなことで4時間近くも説教された。その後、女性は退職している。

▼店長自腹で2割売り上げ

 店舗スタッフへの強制販売でも重要な証言が出た。

 ボヴリースさんが「入社直後に部下ら5人に聞いた話」では、社長は09年1月7日、売り上げが前年よりもガタ落ちしていたために「年末に開かなかった忘年会予算を店長と副店長にキャッシュバックしよう」と緊急ミーティングで提案。「当日にバッグを15万円以上買えば、翌月の給料日にジャスト15万円を支給」と細かに指示した。購入額が15万円以上なのは、それ以下だと会社の利益にならないからだ。

 同じく出廷した前出の元副店長もこれを裏付ける証言をした。彼女はこの日の夕方、本社社員から電話で内容を伝えられて「お金がない」と断ると、社員は「カードでも何でも使えば!」と叱られた。やむなく16万円分を買う羽目になり、休みだった店長は呼び出しを受けて自腹を切った。

 強制販売は6月と8月にもあり、8月はボヴリースさんの休暇中だった。8月の指示は「17、18日にバッグなどの商品を2個ずつ」。営業とは直接関係ない人事部長が店への連絡を仕切り、自らも電話した。人事権を持つ者が直接に呼びかけた「成果」で、店長らはバッグなど計170個の商品を買い求め、その売上高は客の購入分を含めた全店舗の2割弱に達した。

 第1回尋問では、人事部長も証言席に座った。

 部長は9月29日のセクハラ発言は「あくまでお願いしただけで、私も太っていると思った」と社長をかばった。1月の強制販売は「福利厚生目的でイタリア本社の承諾も得た」。8月の販売は、社長の指示を受けて連絡を仕切った点は認めたが、ボヴリースさん側の弁護士に「人事権をちらつかせた」と追及されると、「そう取られないように話した」と弁明に追われた。第2回尋問は、社長が証言した。(つづく)

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