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2012年 7月 3日

「雇い止め」の救済認めず
差し戻し審で東京高裁が判決 

新国立劇場の元合唱団員事件 

 新国立劇場(東京都渋谷区)の元合唱団員の八重樫節子さん(63)が、契約更新の審査で不合格とされたのは不当労働行為に当たるかどうかが争われた差し戻し審で、東京高裁は6月28日、判決を言い渡した。齋藤隆裁判長は「(合否の判定は)非常に高い裁量に委ねられている」として、請求を退けた。財団が団体交渉を拒否していた部分については、不当労働行為と認定した。八重樫さんが所属する「音楽家ユニオン」は上告する方針だ。

 八重樫さんは1998年3月、運営財団と合唱団員の出演契約を結んだ。その後、歌唱能力を審査する年1回の「試聴会」に合格しながら契約更新を繰り返していたが、03年2月に不合格(雇い止め)になった。これに対しユニオンは、合唱団員の労働条件に関して財団への批判を行った直後のものであり、財団の推薦でウィーン留学を経験するなど「歌唱能力は合格水準だった」として、不合格判定の撤回を求めた。財団は昨年4月まで「労働組合法上の労働者ではない」と団交を拒否していた。

 東京都労働委員会と中央労働委員会は、「不合格措置が不当労働行為とまでは言い切れない」として、団交拒否のみ救済を命じたが、東京地裁・同高裁は合唱団員の労働者性さえ否定。最高裁は昨年4月、労働者性を認め、審理のやり直しを命じていた。

▼組合嫌悪の発言を軽視

 判決は、団交拒否に関しては不当労働行為と認定した。一方、不合格措置については、試聴会で八重樫さんを審査した合唱指揮者が労働組合を嫌悪する発言をしていたことは事実と認めつつも、「個人的な発言」と指摘。そのうえで、審査結果は「芸術家の判断であり、非常に高い裁量に委ねられている」として、不当労働行為ではないとした。

 判決について音楽家ユニオンの篠原猛代表運営委員は「合否の決定権のある人が労働組合を忌避しているのに、それを認めないのはおかしい」と批判。裁判とあわせて、「団交で善処していく」と語った。八重樫さんは「残念としか言いようがない」と述べた。財団は「こちらの主張に沿った極めて妥当なものだ」とコメントした。

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