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2012年 7月10日

最低賃金、時給1000円に
〈12年度最賃審議の課題〉上 

大幅引き上げはなぜ必要か? 

 2012年度の地域別最低賃金の目安審議がスタートした。働く者にとって重要なセーフティーネット(安全網)の一つである最賃。その引き上げをめざすうえでの課題を追った。(3回連載)

▼最賃裁判に102人

 「毎月の給料12万円程度に妻の障害年金が6万円くらい支給されていますが、半分以上は医療費のためになくなってしまいます。光熱費や電話代などを納め、毎月手元に残る現金は3万円を切ります。そこから毎日の食事や日用品を賄っています」

 法廷でこう陳述したのは、最低賃金1000円(時間給)以上への引き上げを国に迫る「神奈川最賃裁判」の原告の一人、伊久間昇さん(57)。

 長年の不況で内装工の仕事を3年前に廃業。転職先の警備会社で一昨年、40度近い猛暑の中を39日間休みなく働かされた末、出血性胃潰瘍を発症し、今は系列会社で時給950円の梱包作業に従事している。

 この辛い体験から「体を壊すことなく普通に働いて普通に生活できる社会にするためにも一刻も早い最賃の引き上げを」と訴える。

 「最賃裁判」は昨年、県内で時給1000円未満で働く50人の原告でスタート。追加提訴は3次に及び102人に膨らんだ。
 大手自動車メーカーで働く期間工、コンビニ、外食産業、介護、タクシー運転手など原告の職種は多様。高齢者、シングルマザーなど、正規採用の就職が難しく、「終身雇用」「年功賃金」などの日本型雇用慣行からはじかれた人々が集まる。

 裁判で原告らは、最賃額が下回ってはならないとされる「生活保護費」を時間給換算する方法に「ごまかしがある」と指摘。正しく計算すれば最賃額は「1400円を超える」とし、神奈川労働局に時給1000円以上への引き上げを行わせるよう求めている。国は門前払いを主張したが、横浜地裁はこれを退け、既に実質審理に入った。

 低すぎる最賃の被害者たちが自ら改善を訴える初の挑戦。最賃額が全国2番目(836円)の地域で、原告はまだ増える勢いだ。

▼震災復興のためにこそ

 「宮城県多賀城市/被災地住宅復旧工事作業員/12万1000円~15万4000円」「岩手県釜石市/警備員/12万1000円~13万8600円」。

 東日本大震災被災地の求人票には、週休2日の表示もなく、月給の最賃割れが危ぐされるものも少なくない。

 被災地は最低賃金の水準が最も低い地域でもある。全国最下位の岩手が645円、福島658円、宮城675円と、全国平均737円に遠く及ばない。ガレキ処理事業では十数次もの県外の下請け業者が間に入り、現場の賃金は1日「6000~7000円台」と、運輸関連の労組関係者は指摘する。「復興特需」の影で、現場は今も最賃がかろうじて「歯止め」になっている。

 昨年は、震災の中小企業への影響などを理由に改定額は「1円」に抑えられた。宮城県労連は今年5月、労働局などに「中小企業の経営基盤強化は労働者の賃金を抑えることではなく、下請け、中小企業への低単価や、買い叩きなど不公正取引を許さない施策や、中小企業支援策の徹底で行われるべき」と要請した。

 「最賃の大幅引き上げ」と「経済状況の好転」。復興のためには両方同時に追求することが求められる。

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