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2012年 8月 6日

いじめ・暴力を克服し、人間的尊厳を!
全教がアピール  

大津の中学生自殺事件で 

 学校の教職員らでつくる全教は8月2日、滋賀県大津市の中学生が自殺した事件に関連し、「子どもたちのいのちを守り、人間として大切にされる学校づくりをすすめましょう」と呼びかけるアピール(全文下記)を出した。 

 アピールは、いじめなどで苦しんでいる子どもたちの声と思いを聴き、その言動の背景にあるものをしっかりつかむことが教職員に求められると指摘。子どもたちの現実を学校全体で共有し、問題解決をはかるには、協力して取り組める教職員集団の存在が不可欠であり、学校と保護者との信頼関係づくりが必要だと訴えている。

 教職員が子どもたちとじっくり向き合うためにも、長時間過密労働の解消や30人学級の実現、教職員の定数増など教育条件の改善が必要だと強調している。 

いじめ・暴力を克服し、人間的尊厳を!=子ども達の「いじめ」自殺問題について=

大津市の「いじめ」によって中学校2年生の男子生徒が自殺したとされる事件に、わたしたちは大きなショックを受けています。事件のくわしい真相については、中学校・教育委員会による調査、または、市・警察による調査・捜査の最中であり、まだよくわからない点も多くあります。
しかし、子どもたちの命と人間的尊厳を守る立場から、どんな事情があったとしても、いじめ・暴力により自ら命を落とすなど絶対あってはなりません。二度とくりかえさないために、今こそ、いじめ・暴力を克服し、子ども達の人間的尊厳を守る学校づくりをすすめることをよびかけます。

▼なにより命と人権を最優先に

 「他県のこと」ではなく、京都の教職員自らの問題としてとらえたいと考えます。どこの学校でも、どの学級でも起こりうることだからです。
 私たちの学校の現状も振り返り、命と人権を守ることを最優先にした視点・まなざしを確立できているのか、いじめられている生徒の苦悩に寄り添った指導ができているのか、きびしい自己分析と集団的論議が必要です。
 「いじめられる側にも問題がある」「あの程度はいじめではない」では、結果としていじめを見逃し,より深刻な事態にいたってしまいます。
 「いじめはなかなか見抜けない」「つい見逃してしまう」という実態があることも事実です。しかし、絶対いじめを認めないという断固たる姿勢を示すことが大切ではないでしょうか。地域でも学校でも、気づいた大人が、いじめ・暴力を絶対に許さない姿勢を示すこと、子ども達の内面に寄り添って受けとめることが必要ではないでしょうか。

▼人を人として大切にすること

 残念ながら教職員にも、「できる子・できない子」などの一面的なものさしでこどもを見てしまい、傷つけてしまうことがあります。人を人として大切にする、人間的尊厳を守りぬくため、教職員の相互批判や教育的論議をおおいにすすめなければなりません。
 また、「忙しすぎて、子どもの出しているサインを見落としてしまう」実態も実際にあります。先生の数を増やすことや30人学級の早期実現や多忙化の解消は急務です。

▼背景にあるもの

 「格差社会」「過度の競争」など、人を人として大切にしない社会的風潮があります。国連子どもの権利委員会は、日本の子どもが「高度に競争的な教育制度等によって、ストレスにさらされ、その結果、子どもたちの成長・発達に精神的・肉体的歪みを生じている」と指摘し、3度にわたって是正勧告を出しました。
 今、学校では、教員に対し、「あなたの指導がわるいから」と、一面的に「自己責任」のみを強調する「指導」が行われ、その結果、問題が起きても教員がだれにも相談できないなどの実態もあります。「自分のクラスでなくてよかった」などととらえてしまう傾向さえ生まれています。教職員をS・A・Bなどと評価し給与に差をつける「成果主義」的な教職員評価制度などは、学校の隠蔽体質に拍車をかけています。
 教育委員会や管理職が、何でも問答無用のトップダウンで施策を押しつけるのでなく、集団的に取り組むことができる風通しのいい職場づくりこそ、いじめ問題の解決の前提です。
地域・保護者と力を合わせてこそ
 いじめ問題は、「グループの中で、いじめ・いじめられの関係がすぐに変わる」など、実態がつかみにくくなっています。一人の教師の「目」だけでなく、教師集団のとりくみが重要です。また、地域・保護者の力が必要です。学校の教育活動や取組について、必要な配慮をおこないつつ、その困難さもふくめて日常的に保護者に伝え、協力をもとめ、力をあわせて問題の解決に当たることが大切です。

▼教育の条理をもとに

 子ども達の問題行動の対応について、刑事事件に相当する事案など必要に応じての警察との連携は必要です。しかし、なんでも問題行動の対応を警察にたよることは、子どもの成長・発達を教育的観点から保障する上で、大きな問題があります。学校での対応が困難な問題について、専門的な教育関係機関などと連携し、支援を受け取り組むことが重要だと考えます。教育関係の専門機関の体制充実は急務です。
また、この事件を利用して、教育委員会の隠蔽体質を理由に「市長の統制下に教区委員会を置く」などの主張は、教育を政治的にふりまわすことになります。今必要なことは、政治的思惑ではなく、子どもを中心に地域の学校を支えようとする、保護者・地域・教職員の取り組みです。

▼今、「いじめ」から子どもたちを守る、「いじめ」をさせない学校づくりを!

【学校・教職員の取組】

1,今、教職員集団が、子どもたちの人間的尊厳を守る姿勢の表明を!
 ○被害者の立場に立ち、寄り添う姿勢を示すことを大切にしましょう。「命の尊さ・大切さ」の指  導と同時に、教職員が「全力で守る」姿勢を表明することが重要です。
 ○加害者に対し教職員の毅然とした姿勢を示すことが大事です。そしてその心情や様々な家庭・  友人関係などの背景を理解し、寄り添うことをすすめましょう。
○「サイン」見逃さず、子どもたちと触れ合う時間を確保しましょう。
2、学級・学年の枠を超え、実態の交流・把握と取り組みの交流を!
 ○担任まかせにせず、学年・学校全体で実態把握・分析と方針を確立しましょう。その中で担任  の思い・子どもたちとの関係を尊重しましょう。
 ○「子どもをどう理解するか」など、おおいに学習・論議しましょう。
 ○必要な場合は、関係専門機関とも連携し、緊急対応できる体制を確立しましょう。
3、子どもたちに、自分たちのこととして問題を投げかけ、論議・意思表明・アピール発表などの 取組を!
 ○児童会・生徒会での論議とアピール活動などの取組をすすめましょう。

【父母・地域と力を合わせて】
1,日常的に、学校・学級の実態の共有を!
 ○通信・参観などで困難も含めて、学校の実態を発信しましょう。
 ○一方通行の「学校方針説明」でなく、悩みの交流もできる懇談会を工夫しましょう。
2,ひとりぼっちの保護者をつくらない!
 ○「何でも話せる」、相談できる場づくりを、PTAや地域の中でつくる取組をすすめましょう。
 ○地域で教育懇談会の開催をすすめましょう。

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