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2012年 9月26日

残ればシリアへ赴任!?
〈NECの1万人リストラ〉中  

人権尊重の国際公約はどこへ 

 「1万人リストラ」を進めるNECでは、早期退職に応じない社員への退職強要が繰り返し行われた。ターゲットにされた社員の1人は「残れば、内戦状態にあるシリアに転勤とどう喝された」と証言する。NECが企業行動指針で人権尊重を掲げる国際公約はどこへ行ったのか。

▼嫌がらせがエスカレート

 NEC関連会社に出向する技術職の男性(40歳代)が、5月中旬から受けた7度に及ぶ「面談」の内容はこうだった。

 特別転進支援施策(早期退職)への応募を断る男性に対し、取締役らが「主任としての能力がなく、新入社員よりも劣る」などと、職業人としての尊厳やキャリアを全否定する発言を繰り返し、退職に追い込もうしたのである。

 男性の業務の一つに他社製品の情報収集があった。取締役らが言う能力の問題は報告書の書き方をあげつらったものだったが、これまで直属の上司からも、不十分との指摘を受けたことはなく、到底納得できるものではなかった。

 取締役らは業を煮やしたのか、5度目の面談で、「退職に応じない場合、内戦状態にあるシリアや、北海道などの地方に転勤することになる」と迫った。男性は「単なる脅しとは思えない」と振り返る。

 その後、主任の職を解かれ、年収で百数十万円もの減収に。所定時間外に社に入れないよう、会社があるビルのセキュリティー・カードを没収されたり、性的な中傷を社内で広められるなど、嫌がらせはエスカレートしていった。

 男性は7月、電機・情報ユニオンに加入。度重なる退職強要の中止について、三田労働基準監督署に助言指導を申請した。後日、社長らが同署に出頭し、面談はひとまず止んだ。

▼「もはや人権問題」

 関西にあるNEC関連会社ではこの夏、6人の社員がユニオンに加入した。

 組合員の1人は「うつ病の人を呼び出してまで面談を行っている。もはや労働問題と言うより人権問題だ」と訴える。

 NECは「グループ企業憲章」で、「あらゆる企業活動の場面において人権を尊重し、差別的取り扱い、児童労働、強制労働を認めない」「個人の尊厳を傷つける行為を行わない」としている。

 これは国連が提唱している「グローバル・コンパクト」に応えたもの。企業グループ内で人権、労働、環境を大切にすると宣言する、いわば多国籍企業の国際公約だ。昨年度の人権に関するグループ社員の研修受講者はウェブ上を含め2万4600人に上ると、自社のホームページで「実績」を誇っている。

 一方、国内では「面談」という名で退職強要が正当化されてきた。前述の男性は職業人としての尊厳を傷つけられ、強い不安や焦燥感、不眠、食欲不振にさいなまれ、「自殺も考えた」と話す。

 厚生労働省が今春まとめた「職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円卓会議」報告は、個人の尊厳を傷つける職場のパワーハラスメントを「職務上の地位や人間関係などの職場内の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて精神的・身体的苦痛を与える」と定義している。

 退職強要は「業務の適正な範囲」には入らない。人権研修を受けなければならないのは、NECグループの経営陣の方ではないだろうか。(つづく)

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