京都府職員労働組合 -自治労連-  Home 情報ボックス 府政NOW 京の写真館 賃金 料理 大学の法人化



2012年12月25日

野宿者排除に突き進む役所
東京・江東区の堅川河川敷公園で  

今年だけで2回も行政代執行 

 年の瀬が近付いてきた12月5日朝、首都高速の高架下にある「竪川河川敷公園」で、住まいや仕事をなくしてテント暮らしをしていた野宿者たちが、200人に及ぶ区役所職員や警官らに強制排除された。野宿者の支援者100人が抗議したが、公園を管理する東京・江東区は今年だけで2回目の排除に踏み切った。1年の間に同じ場所、同じ人に対し強制排除が行われるのは前代未聞という。

 2回目は特に執ようだった。野宿者たちは、区が10月に退去するよう求めてきたため、多目的広場から行政代執行の対象外である公園内の副堤に移った。それでも区は公園を封鎖し、副堤と公園の敷地を隔てるべく高さ2メートルの鋼板フェンスを設けた。野宿者はわずか幅数メートルの土地に押し込められてトイレや水道も使えなくなった。

▼約束反故でも「問題なし」

 JR亀戸駅近くにある公園には、バブル崩壊の影響で20年ほど前から職を失った労働者たちが住み始め、今では10人ほどがテントを営む。5年前から暮らす郡司春彦さん(53)は、「以前は私たちがいても住民たちは普通に公園を通っていた。排除しなくてもありのままにしてくれればいいのに」と話す。「以前」とは公園の改修工事が始まる2009年までのこと。テントが立つ光景は当たり前で、親切な人が食べ物や衣類を分けてくれていたという。

 改修工事に着手した際、担当部署である「土木部水辺と緑の課」課長は、「排除はしない」と約束した。しかし、それは反故にされて今年2月には最初の行政代執行が行われた。今、野宿者たちがおびえているのは、区の姿勢に便乗する者が起こす襲撃だ。現に今年の夏には近所の中学生たちが石を投げつけてきた。10月にはJR大阪駅周辺で野宿者が殺される事件も起きたから恐怖はなおさらだ。しかも、フェンスで囲われ閉鎖された空間は外から見えないために事件が起きやすい状況を生んでいる。区は「問題ない」というが、一大事が起きてからでは遅い。

▼話し合いを一切拒否

 野宿者たちは、支援者とともに区役所へ出向いて話し合いを求めている。だが、区は応じず、12月10日に「今後の対応について」という文書を一方的に突き付けてきた。そこには「申し立てはすべて水辺と緑の課に文書を出すように」と庁舎の出入りを禁じる旨が記され、「(庁舎からの)退去命令に従わない場合、警察に通報する」とある。

 こうした対応は、命を守るべき行政機関として間違ってはいないか。本来、野宿者の問題は土木の担当ではなく、福祉や人権の部署がかかわるはずだからだ。にもかかわらず、区の人権推進課は「対応はすべて水辺と緑の課に任せている」として無関心を装う。

 区が頑な姿勢をとる背景には、近くにある東京スカイツリーの観光客を当て込んだ再開発やオリンピック招致がある。山崎孝明区長は都議会議員時代に招致委員長を務めたほど熱心で、野宿者の存在がイメージを損なうとみているようだ。

 寒空の下、野宿者たちは互いを思いやりながら暮らす。そこには、事業を優先する区の冷たい対応とは正反対の人間同士の温かさがある。前出の郡司さんは言う。「テントは命のとりで。何とか残したい。全国の人が応援してくれている。そして何より、仲間のために人権を守りたい」。(ルポライター 根岸恵子)

府職労ニュースインデックスへ