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2012年 2月23日

地域社会への貢献度を重視
高知市の公共調達基本条例

労組は「一歩前進」と評価

 高知市で今年4月、公共工事や委託業務を発注する際の基本理念を示す「公共調達基本条例」が施行される。入札が価格競争に偏らないよう、公正労働基準の順守や環境保全、地域社会の活性化など、地域への貢献度を重視しているのが特徴。賃金の下限は定めないが、著しく低い賃金や請負料金については、学識者らでつくる審議会で検討し、市長が改善を指導する仕組みも設けた。関係する労組は「一歩前進」と評価している。

▼条例で市の姿勢打ち出す

 条例は労働、環境、男女共同参画、人権擁護、地域社会の発展などを「社会的価値」と位置づけ、その実現と向上を目的に据えた。企業の社会貢献度を入札の評価項目に加え、受注企業の行動を方向付けようとする「政策入札」の考え方に基づく。

 そのうえで、条例は受注企業に対し、「適正な賃金」「適正な請負代金」の支払いを義務付けた。具体的な基準は設けていないが、公共工事設計労務単価など国の指標からみて著しく低い場合、市長が改善を指導する。

 高知市議会で公契約条例制定の要望が強く出されたことから、市は労使の代表と有識者らでつくる「入札・契約制度検討委員会」を2010年に設置。入札制度見直しの提言が同年秋にまとめられ、11年末の条例制定(全会派一致)につながった。

 市の担当者は「当初は提言を行政上の指針にとどめることを検討したが、労働環境を守っていくという市の姿勢を市民に広く知ってもらうために、理念的な条例を制定することにした」と説明する。

 検討委員会の委員を務めた折田晃一・連合高知事務局長は、「賃金規制がないのは残念だが、社会的価値を重視する方向を示したのは一歩前進」。千葉県野田市や神奈川県川崎市のような、公契約条例の実現を展望する。

〈解説〉
社会的価値」前面に
 
 条例は公契約について、労働や環境、雇用、地域社会への貢献などお金では代えられない「社会的価値」の実現という理念を打ち出した。地域の雇用を支え、高い技術を持った企業が、人件費の安さだけを売り物とする企業に仕事を奪われないようにしようという試みだ。

 先行事例では山形県の公共調達基本条例がある。高知市の条例はこれを一歩進め、「適正な賃金」「適正な請負代金」の支払いを担保させる仕組みを設けた。審議会の検討次第では、賃金の底支え、底上げ機能も期待される。公共工事だけでなく、委託業務や物品提供契約の受注金額を底支えする枠組みとなっていることにも期待が集まる。

 「公契約条例」は広く知られるようになったが、賃金規制に対する関連業者の警戒心はまだまだ根強い。そうした制約の下、まずは理念条例をつくり、運用を通じて市民の理解を得ながら、次により充実した条例を展望する。高知市の条例制定はそんな試行錯誤の一つの形だと言える。
(連合通信)

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