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「安全確保へ規制の強化を」 |
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貸切バス事業の規制緩和が事故の背景に |
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群馬県内の関越自動車道で死者7人を出した高速ツアーバス事故について、関係する労働組合からは「安全確保の規制強化」を求める声が相次いでいる。2000年に行われた貸切バス事業の規制緩和が事故の背景にあるためだ。 ▼強制力ある規制こそ/私鉄総連 大阪であずみ野観光バスが重大事故を起こしたのは2007年。それから高速ツアーバス事業の安全対策はどうなっていたのか。 私鉄総連の藤井一也書記長は「交替運転者の配置基準(2日間の平均で1日当たり670キロメートル以内)が設置されただけ。効果的な対策は何もなかった」と言い切る。1日670キロの基準自体、当初から「長すぎる」との声が上がっていた。 貸切バス事業は2000年に免許制から届出制に緩和された。以降、約10年間で事業者数は2倍に。2005年に23万人程度だった利用者は現在600万人を超えている。過当競争が運賃ダンピングを招き、運転者の賃金低下や過重労働が社会問題になっていた。 「そもそも政府は規制緩和で事業者が参入するハードルを下げる代わりに、事後の規制・監査を強めると言っていた。しかし、監査などの体制整備は不十分なまま。約束が違う」と藤井書記長は怒る。 例えば、日雇いやアルバイトを使うのは道路運送法違反だが、零細な事業者になるほど野放し状態だ。今回事故を起こした運転手は日雇いだったと報道されている。日雇いだと、前日にどんな仕事をしていたのかを把握できず、「勤務と勤務の間の休息時間8時間」などの厚生労働省基準が守られているかどうか確認が困難。疲れをためた状態で運転することにもなりかねないのだ。 私鉄総連は再発防止策として、深夜運行の2人体制や1日走行距離450キロなどの規制を強制力を持って行うこと、国土交通省の監査体制を強化すること、そして、ダンピング運賃をバス会社に押し付けている旅行会社など「発注者」の責任を問えるシステムが必要と訴えている。 ○ 私鉄総連が加盟する交運労協は5月7日にこの問題で見解を発表している。 見解は行政に対し、事故原因の徹底的な究明を要求。再発防止策として安全運行ができる労働環境の制度確立や国土交通省の監査体制強化を求めている。 ▼深夜を2人体制に/自交総連 タクシー、バスのドライバーでつくる自交総連は5月8日、「関越道の高速ツアーバス重大事故に関する見解と要求」を発表した。事故の背景に規制緩和があると述べ、(1)交替運転者配置基準は1日500キロ以下に(2)深夜は2人体制を義務化(3)低運賃などを押し付ける旅行業者への監督指導の強化――を求めている。 自交総連は2000年の規制緩和について、「重大事故が起きかねない」と指摘し、07年のあずみ野観光事故後にも抜本的な対策を求めてきた、という。 最近も、国土交通省の「バス事業のあり方検討会」に対して、旅行会社の要求による運賃ダンピングの横行や違法なアルバイト雇用の実態を訴えて改善を迫ってきたものの、「私たちの要請の趣旨は生かされず、不十分な最終報告が3月に出された矢先に今回の重大事故が起きた」としている。 最終報告は具体策が乏しく、旅行業者への指導・監督の強化や運賃適正化も先送りされた。 規制緩和以降、一貫して安全対策を軽視してきた行政と政府の責任は免れないと、自交総連は厳しく批判している。 ▼人員増で監査強化を/国土交通労組 「今回の事故は、90年代から始まった規制緩和が最悪の形で現れたものだ」 こう語るのは、国土交通労働組合の合羽井享副委員長。貸し切りバスの監督官庁である国土交通省の労働組合役員である。 同労組によれば、行き過ぎた規制緩和でバス、トラック、タクシー、ダンプなどの業界では過当競争が広がり、労働者の賃金と安全に悪影響を及ぼした。9日に発表した談話では、こういう政策を進めた政府と国交省など行政の責任は重大だと指摘している。 マスコミを含め、事故の背景として不十分な監査体制が指摘されている。 合羽井副委員長は「自動車関係の監査担当職員は全国で310人。規制緩和前の3倍になったと言われるが、それでもこの程度。現場の職員は人が足りないなかで、悩みながら必死で働いている」と実情を話す。 参入規制があり、一定条件を満たした事業者を相手にしていた時とは、同じ監査といっても手間暇や困難さは全く異なるという。 監査体制を強化するには担当職員を増やすしかない。そのため、国土交通労組は、一方で進む国家公務員の人員削減や新規採用抑制などの方針を見直してほしいと強く訴えている。 |
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