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2012年 3月16日

「危険な方向に向かっている」
国際労働団体が警鐘鳴らす

TPP9カ国の交渉内容

 ITUC(国際労働組合総連合)は3月11日、米国やオーストラリアなど9カ国が進めているTPP(環太平洋経済連携協定)交渉の内容について、「危険な方向に向かっている」と警鐘を鳴らした。

 3月1日から9日間、オーストラリアで開かれていた11回目のTPP交渉参加国会議を受けてコメントしたものだ。

 ITUCは、「各国政府は多国籍企業に国の主権を譲り渡そうとしている」と指摘した。外国の投資家がその国の環境保護政策などによって「利益を得られなかった」場合、その政府を訴えることができるのがISD条項。投資家らはこの条項を正式に盛り込ませるため、積極的に動いている。

 シャラン・バロウ書記長は「相手国の国民の健康を犠牲にして、製薬メーカーに薬価値上げを保障する仕組みも作ろうとしている。信じがたいことだ」と厳しく批判した。

▼雇用への悪影響必至

 労働組合が懸念しているのは、雇用と賃金など労働条件へのマイナス影響だ。 

 TPP交渉で対象になっているのは、農業分野だけでなく、投資、金融サービス、薬、医療・保険制度、知的財産権、政府調達の公共事業、国有企業など。一国内の制度全般を外国企業や投資家に開放するという内容だ。大掛かりな規制緩和要求ともいえる。

 このため、雇用や労働条件への悪影響は必至というのが、国際労働団体の見方だ。昨年来、TPP交渉参加国に対しては、雇用や労働条件への悪影響を防止するための措置(国をまたいだ労働事務局の設置など)を求め続けてきた。

▼労働問題は後回し?

 今回開かれたオーストラリアでの会合に対し、国際労働団体などはロビー活動を展開した。現地で政府交渉担当者らに働きかけを行ってきたという。

 しかし、ロビー活動をしても、「交渉担当者の間で労働問題の優先順位は低い」「労働問題を扱わなければならないとは考えているが、労働者への影響調査などを真剣にやるつもりはなさそうだ」との感触が返ってきている。

 6月にロシアで開かれるAPECの貿易担当大臣会合までに交渉をまとめるという情報もある。労働組合は「交渉内容は複雑さを増しており、6月なんてとても無理」と述べつつ、警戒を強めている。

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