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2012年 1月31日

一層の人件費抑制策を打ち出す
どう見る経労委報告

「定昇」をお荷物扱い 

 今春闘での経営側の対応指針となる「2012年版経営労働政策委員会報告」は、相変わらずデフレ解消に背を向け、さらなる人件費抑制策を打ち出しています。労働団体の資料をもとに、報告の問題点を指摘します。

(1)日本の賃金は高すぎる?

 今年の「経労委報告」は円高や電力不足など国内の事業環境が急激に悪化しているとし、「2012年は企業にとって生き残りをかけた正念場の年」と危機感を前面に押し出しているのが第一の特徴です。

 そのうえで、日本の賃金水準が「既に競争力を失っている」と断定。総額人件費抑制策の一層の推進を強調しています。

 確かに、新興国と比べれば日本の製造業の賃金は高い水準ですが、先進国の中では飛びぬけて高いというわけではありません。ドイツやフランスでは日本より高い賃金を支払いながら国際競争でしのぎを削っています。

 高品質の製品を生み出し続けるには「人への投資」が不可欠。賃金を新興国並みに下げれば、日本の「現場力」が失われ、逆に国際競争力が損なわれてしまいます。また、デフレをより深刻にし、「失われた20年」をさらに繰り返すものです。

(2)定昇はお荷物?

 「経労委報告」は「労使は定昇の負担の重さを十分認識する必要がある」と述べました。果たして、定昇は企業にとって「負担」ばかりのお荷物なのでしょうか?

 定昇制度では、定年退職した人の賃金原資が新入社員の賃金と現役世代の昇給分に回るので、人件費の増加は基本的にはありません。そのため「内転原資」と呼ばれます。経団連の前身である旧日経連が大幅賃上げを抑えようと、「人件費は増えない」と関係企業を説得し、半世紀前に導入を促したものです。

 定昇は働く人にとって将来の収入を見通せるだけでなく、公正な処遇を維持するルールでもあり、職場の規律や意欲を保ち、技術・技能の伝承を促す役割を果たしてきました。長期雇用を支え、日本の「現場力」を強めてきた大切な仕組みの一つです。

 日本企業の強みを聞いた経団連調査でも、「長期雇用を前提に技術を蓄積するインセンティブを与え、競争力の強化を図っている」が最多。安易に定昇に手をつけようという姿勢は現場の感覚とかけ離れていると言わざるを得ません。

(3)賃金は上昇している?

 「経労委報告」は、所定内賃金が97年から上昇しているとし、働く人への配分増を否定しています。
 その根拠とされたのが、厚生労働省の「毎月勤労統計」。すべての労働者の統計では所定内賃金、年収ともに減少していますが、パートを除いた一般労働者では、所定内賃金は若干増加しているというものです。

 一方、同省の「賃金構造基本調査」に基づいた年齢ポイントごとの賃金の推移を示した連合の試算によると、1000人以上の企業は97年の水準を若干下回る程度ですが、10~99人未満では35歳で3万900円、40歳で4万600円低下しています。

 中小での賃金水準の低下と非正規の増加が進んでいることは否定できない事実です。

(4)賃金への配分、反比例

 企業が生み出した経済的な価値(付加価値)が働く人にどれだけ配分されたかを示す労働分配率。株主配当や役員報酬の比重が高まった2000年代以降、年々低下し、その引き上げが春闘の課題となりました。「経労委報告」は、景気によって左右されるので賃上げを判断する指標ではないと述べています。

 労働分配率が低いということは、企業が生みだした付加価値にふさわしい賃金を支払っていないということ。人件費と付加価値の割合ですが、それぞれの伸びをみれば、一目瞭然です。付加価値はリーマン・ショック直前まで横ばいに推移する一方、人件費は97年以降、一直線に減り続けています。
 配分の歪みの是正は待ったなしです。

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