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2012年 4月2日

「整理解雇」の撤回認めず
元日航労働者の2つの訴訟で東京地裁 

原告は「不当判決」と控訴へ 

 経営再建中の一昨年末に日本航空で「整理解雇」されたパイロットと客室乗務員の2つの原告団(計148人)が解雇の撤回を求めていた裁判で、東京地裁はそれぞれ判決を言い渡した。3月29日の元パイロットらの訴訟について渡邉弘裁判長は「解雇は有効である」として、原告の訴えを全面的に棄却した。原告側は「不当判決だ」として、控訴する方針だ。

 翌30日の客室乗務員らを原告とする裁判では、白石哲裁判長が原告の訴えをすべて棄却した。解雇の必要性はなかったという「稲盛発言」については、「主観的心情の吐露に過ぎない」としている。

 日航は09年1月に経営破たんし、会社更生法の適用を受けた。その後、大幅な事業縮小と人員削減を行い、東京地裁が認めた更生計画を踏まえるとして、同年末に165人を「整理解雇」した。計画には、具体的な人員削減の方法や職種ごとの削減目標は明記されていなかった。

 これに対し元パイロットや元客室乗務員148人が不当な解雇だとして提訴。会社は「経営再建のため解雇はやむを得なかった」と主張していた。

 整理解雇は、会社の都合で行うものであるため判例上、(1)人員削減の必要性(2)解雇回避努力(3)人選の合理性(4)説明協議義務──の要件(要素)を満たす必要がある。

▼4要件「満たす」?

 29日の判決は、会社更生手続き中であっても整理解雇の「4要素」の枠組みを適用すべきとしたうえで、そのすべてで会社側の主張を認めた。

 人員削減の必要性について日航が更生計画を大幅に上回る営業利益を上げていたが、「更生計画の要請として、人員を削減する必要性があった」と指摘。経営トップの稲盛和夫会長(当時)が「経営上、整理解雇は必要なかった」と記者会見で話したことには一切触れなかった。解雇回避の努力義務では、希望退職の募集を行ったことを評価。病気欠勤や年齢を解雇の人選基準としたことは「業務に対する貢献度が劣っており、合理性がある」と認めるなど、原告の訴えを全面的に退けて「解雇は有効」と判断した。

▼原告「勝つまで闘う」

 29日の判決直後、東京地裁前では「不当判決」と書かれた紙を原告側弁護士が掲げると、約300人の支援者から「裁判所は何をやっているんだ」などと怒声が上がり、重苦しい空気に包まれた。目に悔し涙を浮かべる女性の姿も。元客室乗務員の原告は「稲盛さんでさえ『解雇の必要性はなかった』と言っているのに、なぜ…」と驚いた様子で立ち尽くした。

 判決について原告側の安原幸彦弁護士は「日航は2010年12月末時点で過去最高の利益を上げている。165人を解雇しなければ会社が本当に破たんするのか。この点を裁判所はまったく吟味していない」と指摘。「更生計画があれば『全員解雇してもいい』と言っており、実質的に4要件を適用していないのと同じだ」と批判した。

 元機長の山口宏弥・パイロット原告団長(60)は「絵に描いたような不当判決で、控訴する。安全な日本航空を再建するため、勝つまで闘う」と険しい表情で語った。日航は「当社の主張が全面的に認められたものと受け取る」とコメントした。

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