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2012年10月29日

不払い賃金是正へ攻勢
自交総連北海道地連  

複数の裁判で待遇改善進める 

 自交総連北海道地方連合会(道労連加盟)がタクシー運転手の待遇改善で攻勢を強めている。違法な「業界ルール」に基づく未払い賃金をめぐり、2つの裁判で相次ぎ勝訴判決と和解を勝ち取った。これらの成果をテコに業界でまん延する違法な働かせ方を一掃したい考えだ。

▼賃金計算は1分単位へ

 「これで労働条件は道内トップクラスだ。会社側は最大限の誠意を示した」。こう語るのは、自交総連北海道地連の松任正博書記長。道内最大手の札幌交通(札幌市)に対しタクシー運転手167人が未払い賃金約1億8400万円を求めた裁判の労使和解(9月9日)を振り返る。

 同社では、これまで休憩中に働いた分や15分以上の客待ち時間分の賃金を支払っていなかった。昨年2月の原告団結成直後、会社側は残業代を含め1分単位での賃金支払いを実施。休憩時間の利用を徹底させるなど是正措置を行った。それにより、「賃金が一人当たり月約1万4000円アップした」(松任書記長)。

 同様に客待ち時間を「休憩」扱いにしていた朝日交通の裁判でも、札幌地裁は9月に未払い賃金など総額約1400万円を原告6人に支払うよう命じる判決を出した。判決は、乗客が少なければ最低賃金を下回る「完全歩合給」にも触れ、「出来高を上げるための無理な運転を助長させることにもつながり、従業員及び乗客のみならず第三者を含む道路交通の安全性にも関わる」と批判し、懲罰的な付加金の支払いも命じた。地連は昨年以降、ほかにも4社以上の未払い賃金請求訴訟を進めている。

▼違法労働がまん延

 道内で未払い賃金を求める裁判が相次いでいる背景には、低賃金労働の改善が進まない実情がある。規制緩和で増え過ぎたタクシーを減らし、労働条件の改善などをはかる「タクシー適正化・活性化法」の施行から丸3年が経つが、札幌市内の減車率は約8%。減車分は車庫に眠っていた車両が減っただけで、稼働している車両数は同じだ。「賃金はむしろ不況の影響で下がった。法律は新規参入・増車防止に効果はあったが、待遇改善には手ぬるかった」(同書記長)という。

 同地連によると、道内タクシー運転手の平均年収は205万円。年100万円を下回る運転手もいる。松任書記長は「最賃法違反は当たり前で、労働法違反が横行している。年金をもらいながらでないと仕事ができず、若い子育て世代は将来を描けない」と業界内の実態を明かす。

 少しでも収入を得ようと、無理な運転による交通事故も続発。一般ドライバーよりもプロのタクシー運転手の方が事故率の高い地域さえあるといい、「人の命を預かることに誇りを持って働ける仕事にしなければならない」と訴える。

▼活性化法より一歩前へ

 そうしたなか、労働組合にとって新たな活路となったのが裁判闘争だ。すでに加盟組合に複数のタクシー事業者から「賃金体系を見直したい」との打診が相次いでおり、「判決がインパクトを与えている」と手応えを語る。

 12月からは札幌市内での減車の取り組みについて行政や事業者、労組などによる検証が新たにスタートする。松任書記長は「労働法違反を是正しない事業者は業界から撤退させる必要がある」「暮らしていける産業にすることが、安心・安全な公共交通になる条件だ」と指摘。適正化・活性化法よりも一歩前に進んだ対策が不可欠だと強調した。

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