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2012年10月11日

「ミニ橋下」登場、職場は萎縮
大阪市政の現場〈上〉  

思想調査裁判の原告ら語る 

 大阪市職員に対し組合活動や政治活動について問うた「思想調査」をめぐる裁判(原告は大阪市役所労働組合の組合員55人)が10月3日、大阪地裁で始まった。原告たちは強権的な橋下徹市長の政策で萎縮した現場の実情を語った。

▼業務命令で「パワハラ」

 「業務命令だ。やれ」──。市内の某区役所に勤務する川本正一さん(59・原告団事務局長)は5月、管理職が自分で出来なかった業務を後輩の職員に押し付けているのを目の当たりにした。「職場に『ミニ橋下』が出てきたのを見て、提訴を決意した」と語る。

 橋下市長は2月、「労使関係に関する職員アンケート調査」を行い、「組合加入の有無」や「組合に誘った人の名前」、「投票活動」などについて回答するよう迫った。市長の署名入りの文書には「業務命令」と明記。回答を拒めば、「処分の対象になりえます」と書き添えてあった。

 このアンケートを見て悩み続けたという川本さんはこう心境を吐露する。

 「就職したときからお世話になった先輩と組合を結成した。質問に答えれば大好きな先輩を売ることになる。窓口でお年寄りに知事選の応援も頼まれたこともある。市民の思想調査にもつながる」

 川本さんは悩んだ末、回答を拒否した。調査結果は4月に未開封のまま廃棄されたものの、それで良しとはならない。「末端の管理職が市長のまねをし、市長の言うまま何も考えられなくなっている。市長が辞めたとしても困った状況は同じや」と訴える。

▼鯉のぼりの掲揚認めず

 「市民のために一生懸命がんばってきた自分の生き方を(アンケートによって)踏みにじられた」。こう語るのは、保育士の永谷孝代さん(原告団長)。労働運動にかかわる中で、保護者や地域住民と連携して保育サービスの改善を市に求めてきたが、処分をちらつかせて回答を強制され、「労働運動としてやってきたことがあたかも悪いことをしたようだった」と悔しさをにじませた。

 子ども目線の保育ができなくなることも心配している。市内全ての保育所で3月中旬から、これまで祝日のみ掲げていた国旗が毎日掲揚されるようになった。専用のポールは5月に鯉のぼりを揚げるために使っていたが、今年は使用を認められなかったという。

 市長は過去にマスコミを通じて「職員に民意を語ることは許しません」と発言している。「まじめに働いていても市長の意に沿わなければ処分されるかもしれない」(永谷さん)。常にそういう不安が職場の中で漂っていると語る。

▼街宣で市民から通報も

 組合活動も深刻な打撃を受けている。大阪市役所労組によると、8月に組合活動を制限する条例が施行され、市側が「管理運営事項だ」と突っぱねて団体交渉が進まなくなったり、強引に打ち切られたりする事例が起きている。団交事案と当局が認めなければ時間内の話し合いすら出来ないため、組合支部では団交前の申し入れが以前より難しくなった。同時に施行された職員の政治活動を規制する条例の影響で、区役所前で宣伝をしただけで市民から通報されたこともあった。

 田所賢治書記長は「条例は違法で正々堂々と活動しているが、『政治活動はダメ』という職員への刷り込みがある。職場は萎縮している」と話す。(つづく)

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