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2012年 4月26日

おかしいぞ!東京地裁
相次ぐ会社寄りの不当判決 

労組は「危険な流れ」と懸念 

 東京地裁で労働者に冷たい判決が相次いでいる。従来のパターンであれば、「勝訴は当たり前」と思われていた日本航空の「整理解雇」撤回裁判が3月下旬に請求棄却となったほか、今年だけでいすゞやホンダの派遣・期間工切り裁判でも労働者側が敗訴した。一連の判決に労働組合は「極めて危険な流れだ」と危機感を募らせている。

▼利益出ても解雇認める

 3月29、30日。日航の元機長や元客室乗務員ら148人が解雇撤回を求めた二つの裁判で、東京地裁は請求棄却の判決を言い渡した。客室乗務員原告団長の内田妙子さんは「裁判所は会社のもうけしか考えていないのか」と憤った。

 日航は2010年1月に経営破たんし、会社更生法の適用を受けた。経営再建を行い、同年12月時点で更生計画を900億円も上回る過去最高の営業利益を上げていたにもかかわらず、同年末に165人の「整理解雇」を強行した。

 整理解雇は「人員削減の必要性」などの4要件を満たす必要があり、解雇が厳しく制限されている。史上空前の利益を叩き出す日航が165人を雇う経営上の体力があったのは誰の目にも明らか。稲盛和夫会長(当時)ですら昨年2月、「経営上、解雇は必要なかった」と断言した。それでも判決は「人員削減の必要性はあった」として、原告の訴えを退けたのだ。

 原告側弁護士は「165人を解雇しなければ、日航は倒産していたのか」とあ然とした様子で語った。

▼形式的な判断に終始

 会社側の言い分を丸呑みする判決は、とりわけ非正規労働者への冷たさで際立っている。今年2月、ホンダ栃木製作所の元期間工の桜井斉さんが約11年間にわたり、104回契約更新を繰り返した末、雇い止めされた事件。判決は、本人が雇い止め直前に「次回の契約更新をしない」と書かれた契約書にサインしたこと、退職届を提出したことを挙げ、「雇用継続の期待利益はない」として、地位確認の請求を退けた。

 桜井さんは「夜勤明けで突然『契約を終わらせたい』と説明され、頭が真っ白になった。雇い止めに納得していたわけではない」と明かす。そもそも、立場が弱い非正規労働者が、会社の提案を拒否すれば、その時点で雇い止めになっていた恐れも強い。通常なら11年間も働けば、雇用継続への期待権を認めるべきもの。しかし、判決は契約書へのサインなどを理由に形式的な判断に終始した。

▼日航判決にうり二つ

 日航判決から半月後、再び同じ理屈が、東京地裁のいすゞ非正規切り裁判の判決で持ち出された。いすゞは08年秋の世界同時不況による受注減で同年11月、期間工・派遣労働者約1400人を解雇(期間工のみ撤回し、翌年4月までに雇い止め)した。直後にエコカー減税・補助金で生産が持ち直したものの、判決は会社側の「景気の先行きは予測困難で、非正規労働者は余剰人員だ」という主張を認め、「景気悪化による雇い止めは客観的に合理的だ」として、原告12人の請求を全面棄却した。

 判決を言い渡したのは日航運航乗務員訴訟と同じ渡邉弘裁判長。需要回復は予測できたはずなのに、会社が余剰人員と言いさえすれば雇い止めを認めるような内容だ。JMIUの三木陵一書記長は「日航の判決にうり二つだ。極めて危険な流れがある」と警鐘を鳴らす。

 東京地裁では現在、日赤派遣雇い止め訴訟、キャノン正社員化訴訟、日東航空整備解雇訴訟などが継続しており、同様の判決が繰り返される恐れがある。会社寄りの不当判決を許さない労働組合の運動が求められている。

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