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2012年12月17日

突然のバス事業廃止に戸惑い
交通運輸産業の二労組が直面  

タクシー会社では売却の危機 

  「ある日突然、職場がなくなると告げられた」「会社が売却されるかもしれない」。交通運輸産業の職場で、バス事業の廃止と、資産売却の危機に直面した2つの労組が、労働債権と雇用の確保、経営の立て直しへ全力を挙げている。

▼全国への波及を警戒/岡山のバス会社労組
 
 広島県と接する岡山県・井笠地方の住民の足として役割を果たしてきた「井笠鉄道」(笠岡市)が、バス事業を10月末で廃止した。40年前に鉄道事業から撤退し、その後、路線バスを運行してきたが、地方経済の衰退と過疎、燃料費の高騰などで経営環境は厳しく、100年余り続いた事業をついに手放した。

 8月分の賃金の遅配が判明し、私鉄総連の地方組織「私鉄中国」はすぐに会社と交渉。会社側は「10月以降も事業を継続する」と述べていたが、10月12日、労組への事前通告もなく、バス事業の廃止を記者発表。経営や労働条件に重大な変更がある場合、事前協議を行うよう求めてきた労組の要請は、完全に無視された。

 約15億円の退職金の支払いのめども付けず、関係自治体と代替路線の調整も行わないままの廃止決定。従業員150人は10月末で全員解雇された。

 会社がすぐに破産手続きを進めたため、労働債権を確保するための協議も行えず、労組は国の未払い賃金立替払い制度(最大で一人当たり296万円)を活用し、未払い退職金の補てんに努めている。

 同社のバス路線は来年3月まで、岡山県内の中国バスや北振バスが急きょ代替運転を行っている。4月以降は未定だ。最も多くの路線を引き継いだ中国バスは来春までの雇用を確約したが、希望者が少なく、「転籍」は37人にとどまった。

 私鉄中国の幹部は「行政や住民の期待を裏切る最悪のケース」と述べ、対応が後手に回らざるをえなかったと悔やむ。不採算の克服は地方の鉄道・バス事業の共通の課題。総連本部は全国への広がりに警戒を呼びかけている。

▼乱暴な資産売却を警戒/東京のタクシー会社労組

 12月7日、東京都中野区にあるタクシー会社「スガイ交通」の前では、ジャンパーを着込んだ数十人の組合員がタクシーの出庫を実力で阻止するため、早朝6時からピケを張った。いわゆる「バリケードストライキ」だ。会社の存続に危機感を募らせる組合員らが、「一部経営者らによる会社資産の私的流用」の疑いを追及し、経営の立て直しをめざしている。

 ユニオンによると、巨額の赤字を計上しているにもかかわらず、実権を握る一部経営陣が役員報酬を6月に60%も増額しているほか、同社の決算書には「役員貸付金」「長期仮払金」「長期未収利益」など内容の不明な債権科目が並び、その額は合計で売上高の1割にも及ぶという。

 同社は従業員約200人のオーナー企業。経営の実権をめぐる一族の内紛が生じている。赤字覚悟の役員報酬増額や、多額の使途不明債権は、廃業を見据えた動きの一つという見方がある。

 会社に対する主な要求は、(1)使途不明債権の明細開示(2)経営状況を質問したことで解雇された社員4人の処分撤回(3)雇用安定の確約――。加えて、一部経営陣の退任も求める。

 ユニオンは今年8月に結成され、既に社員の過半数が加入した。牛尾道秀委員長は「(実権を握る)一部経営陣への社員の支持は全くない」と内情を説明する。

 一部経営陣はその後、「違法スト」と労組への攻撃を強めている。それだけでなく、非組合員の社員を退職に追い込むなど、ユニオンの影響を意識し、疑心暗鬼に陥っているともみられる。 

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