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救済制度創設へ大きな一歩だが |
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国の責任認めた東京地裁判決 |
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建設現場でのアスベスト(石綿)被害について、国に賠償を命じる初の判断が12月5日、東京地裁で言い渡されました。判決は国が必要な規制を怠ったのは違法と断罪し、政治による救済を求める意見も付記しました。原告らが求めている、建材製造企業やゼネコンの相応の負担による「被害者補償基金」の創設へ、「大きな一歩」となりうるものです。 ▼一人親方らを除外 裁判は、東京、千葉、埼玉在住の建設労働者と遺族336人が起こしたもの。中皮腫などアスベストに起因する病気は治りにくく、原告のうち、亡くなった人の割合は6割に上ります。 判決(始関正光裁判長)は1972年には、中皮腫などの深刻な病気を引き起こすとの医学的知見が確立していたとし、遅くとも81年1月の時点で、防じんマスクの着用義務付けや警告表示などの規制を行っていれば、「被害は相当程度防げた」と指摘。国に賠償を命じました。 全面棄却した5月の横浜地裁判決からは大きな前進ですが、不十分な点も少なくありません。国の怠慢を指摘する一方で、ゼネコンなどの支配下で労働者と一緒に働く一人親方や零細事業主は労働安全衛生法上の「労働者」ではないとし、対象から外したのです。 その結果、80年以前に働いていた人を含め、150人が救済されませんでした。 アスベスト含有建材の製造を禁止すべきだったとの原告の主張も退けました。80年以降、欧米各国が使用量を急減させるなか、日本は高止まりさせたままだったことや、「石綿の代替化の努力義務」(75年・労働省規則)にもかかわらず、ニチアスやクボタなどが2000年代まで製造し続け、被害を拡大した事実に目を閉ざす判断と言わざるを得ません。 賠償額も減額されました。安全衛生法上の国の責任は「二次的」とされ、賠償額が3分の1に減額されています。 ▼加害企業を免罪 「一次的」な責任を負うべきなのは被告・建材企業42社です。ところが、判決は、遅くとも81年以降、危険性を明示する注意義務があったとしながらも、その賠償責任をすべて免罪したのです。 現場を渡り歩く建設労働者にとって、病気の原因となる建材が、いつ、どこの会社の製品だったかを特定するのはほぼ不可能です。 裁判で、原告側は、多数の加害者がいる場合、被害の因果関係を推定して加害者たちの責任を問う「共同不法行為」を指摘していました。石油コンビナート施設を操業する6社に賠償を命じた、四日市ぜんそくをめぐる公害裁判で活用された民法上の規定です(72年、津地裁四日市支部)。 しかし、判決は被害者一人一人についての加害者の特定を求めたうえで、被告42社の中に加害の可能性の少ない企業が含まれているなどとして、原告の主張する「共同不法行為」を認めませんでした。 これでは有害製品でもうけた加害企業が免罪されてしまいます。そのせいか、判決は原告側に「共感するところが少なくない」とし、建材企業やゼネコンの責任による救済制度の創設について、「立法府と関係当局における真剣な検討」を求める異例の「意見」を付け加えています。 原告の願いは「生きているうちの解決」。救済制度の早期確立へ、国を動かす運動が求められます。 〈原告らの声〉/「救済に差別はおかしい」/控訴する方向で検討 「勝ったぞ!」。開廷直後、「勝利」「国の責任認める」の垂れ幕を手にした弁護士が東京地裁から走り出た瞬間、待ち構えていた支援の人波から地鳴りのような歓声が沸き起こった。目がしらを押さえる原告、抱き合って喜ぶ支援者。だが、詳細が判明した後は一転、喜びは司法への落胆と怒りに変わっていた。 「非常に悔しくて仕方ありません」。兄を悪性中皮腫で失い、父も同じ病で苦しむ原告の町田八千代さんは、会見で目を潤ませた。兄の賠償は認定されたが、「この病気に壁はない」と述べ、一人親方と事業主への適用を認めなかった判決に怒りを隠さなかった。 埼玉県在住の原告、高松孝平さん(63)も「建築現場では雇う側もみんな一緒に同じ仕事をする。それなのに事業者はダメというのはおかしい」と憤る。石綿肺を患い、重さ2キロの酸素ボンベは離せない。 「企業(の責任)が一切認められなかった」と悔しがるのは原告団長の宮島和男さん(83)。65年間電気設備業に携わった。一人親方として働いていたため、賠償の対象外だ。「元凶である企業の責任を認めさせるため、控訴して闘います」と決意を述べた。 小野寺利孝弁護団長は、判決が国の責任を初めて認めた点を重視し、「多くの原告の犠牲の上に勝ちとったもの。徹底的に生かさない手はない」と指摘。裁判闘争を通じ、建材企業らの負担で賠償と再発防止を行う救済基金制度の創設を国に求めていこうと訴えた。 |
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