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日本が民主主義であることを信じて疑わない国民は多いだろう。本書は「戦後から続いた原子力政策は、そのことがねじ曲げられているのだ」と伝えている。 冒頭は原発立地のルポ。放射能被害で家や生活を奪われた福島の人たちの現状は、単なる悲劇では片付けられないことがよくわかる。電力会社の寄付や国の交付金によって原発への恐怖も口に出来ない立地住民の様子は、都会に住んでいる人には想像しがたいことばかりだ。 それにもかかわらず、政官財や学界、マスコミが原発推進の姿勢を変えようとしていない事実も次々と指摘しており、「醜態五重奏」と例える。そうした態度に怒って立ち上がった市民が数多く出てきたことも丁寧に追っている。 必読は3人のインタビューだ。特に「脱原発のジャンヌ・ダルク」と称されるアイドル藤波心さんの主張は14歳とは思えず、読んでいる大人も敬服するほかない。浜矩子・同志社大教授の「原発のない経済を考えるべき」との意見は、「原発がなければ産業が成り立たない」という経済界の主張に対する反論と言えるだろう。巻末に付けられた全国の原発一覧や放射性物質の解説も、問題の理解を深めるために役立つ。 原発問題はとかくエネルギー分野に焦点が当たりがちだが、日本の社会全体にかかわる重大なテーマであることを改めて痛感させられる一冊だ。(連合通信社・定価1200円プラス税) |
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