パートU

なぜ拙速な電子府庁化? 電子自治体の問題点 

 政府のe−Japan戦略

 京都府がこれだけ急速に電子府庁化をすすめる背景には、政府の強力な電子自治体推進方針があります。2001年1月には、ブロードバンド環境等ITインフラ整備をすすめる「e−Japan戦略」が策定され、03年7月にはITの利用促進にシフトした「e−Japan戦略U」が策定されました。それに基づき、8月には総務省自治行政局が「電子自治体推進指針」を策定し、都道府県に通知しています。
 「電子自治体推進指針」の中では、「電子自治体構築の目的」として、@住民の満足度の向上、A簡素で効率的な行政運営の実現、B地域の活性化、地域IT産業の振興、が掲げられています。

 
 利用率は上がらず、IT関連産業のビッグビジネスチャンスに

 しかし、そもそも電子政府・電子自治体とは何かが国民的に明らかになっていない中で、たとえば、電子申請は各省庁がそれぞれ億単位のお金をかけて申請手続きの電子化を急ぎましたが、1%未満の利用率(04年度)にとどまっています。一方で、電子システムの市場規模は、「中央省庁向けだけで2兆円、地方自治体向けなどを含めるとその3−4倍」(富士通)と言われるほど、IT関連産業にとって、有望な市場になっています。

 職員削減先にありき

 「電子自治体推進指針」は「今後は、システムのアウトソーシングにとどまらず、一定の業務のアウトソーシングも含めたとりくみが進展していく可能性がある」とし、京都府当局の説明資料でも「京都府では、現在、総務的業務に約400人分の業務があるなど、内部管理業務に相当数の職員を配置しています。こうしたなか、次の業務について、新たに簡素な共通システムを構築し、新システムへの移行及びそれに伴う業務改革を行い、大幅な効率化と業務の簡素化を進めます」としていますが、その前提に給与費プログラムに基づく機械的な人員削減計画があります。このように、電子府庁構想は、大幅な人員削減を目的としたものと言わざるをえません。

 中央集権的な政府のすすめ方

 政府がすすめている電子自治体の構築は、政府がすべて計画を決め、こと細かに自治体に注文をつけて、さらに補助金や交付税などのアメも使ってやらせようとする、まさに中央集権的なやり方です。何をどこまで、そしていつまでに電子化するのかしないのかは、それぞれの自治体が住民と一緒に考えればいいことで、政府に一律的に指示されなければならないような緊急課題ではありません。自治体にとって大事なのは、電子化するかどうかではなく、住民の生活や基本的人権を守ること、そのための手段として電子化が有効であれば電子化すればいいのであって、電子化そのものが目的ではないはずです。次のページへつづく


前のページに戻る