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大切な命の先に憲法がある
嵐に負けない「平和」の根っこをもっと大きく

 「いま、私たちは持っています。戦わないという勇気ある選択をした人類の至宝『日本国憲法』を」
 鞍馬寺の掲示板の張り紙です。平和のメッセージを発信しつづける鞍馬寺。憲法・平和・いのち・自然の大切さについて、信楽香仁貫主に聞きました。通された客間は、南向きで冬の光がいっぱい差し込む温かい部屋、北から見た比叡山がくっきり見渡せます。「毎朝、お勤めのとき、朝日を拝んで一日が始まります」という貫主。やさしくてお茶目ですが、しっかり世界を見つめる話に引き込まれました。


生命あるものは忙しくてはダメ

 問い ゆったりさせられるいいところですね。
 貫主 この鞍馬寺は、自然がいっぱいで、いのちのふるさと、安らぎと元気と本質を感じる場として大事にしています。いまの日本社会は、便利さとスピードが優先され、忙しく動き、人々は何かにおわれているようですね。命あるものは、忙しくてはいけません。
 ここは、ゆっくり陽が昇り、だんだんと明るくなります。自然はゆっくりゆったりしています。人間には、このゆっくりした間が大切です。

 問い 物が余るほどあり、それが当たり前になっている。毎日がせわしいですね。
 貫主 心までおかしくなりますよね。隙間というものがない。家にいても密閉されて外の音も聞こえない。お山は、隙間だらけ、冬はマイナス5度ぐらいになります。ストーブをたいても暖かくならない。それでも、自然の中にいると心は、ゆったりとし、間があるから、考える時間ができる。自然を感じることができる。命を感じます。間がないと人間はおかしくなる。


“気配”を感じるセンサー大切に

 問い 携帯電話を使うと、どこでもつながり、便利ですけど、なんか追われている気がします。
 貫主 便利がよいとは限りません。日本の住まいには、たいてい床の間がありました。ここにもあります。そこはほの暗い。これは、日本にいきづいてきた文化です。真っ暗でなくその直前の明るさです。
 いまの生活は光ばかりで、闇がありません。闇のの中では気配が感じられます。気配はどこにもあります。しかし、自然とかけ離れた物質文明の中にいて、現代人は気配を感じるセンサーがかなり鈍っていると思います。心がない。自分の中に閉じこもり、外に出すことを知らなくなっている。自分の心を開放するイメージすらできない。風の音、鳥の声を聴いたり、花を見て美しいと感じる機会を持つことが大事です。人間が本来持っている心がよみがえってきますよ。
 人間はゆっくり、ゆったりの間が必要です。間がないと自然とかけ離れている物質文明に負けてしまいます。平和が壊されてしまいます。


自然の中に自分と同じ命みつけて…

 問い 子どもも大人も自分のことで精一杯の社会になっている。いつも自分のことしか考えられなくなってきている。ほんとに怖いです。
 貫主 「いのちの環」ということを知っていますか。自然を敬い、感謝し、共に生きる、自然に教えを聴き、自然の中に自分と同じいのちをみつける。草木や鳥、虫も石も樹もそれぞれが大きな「いのちの環」の中で共に生きる、生命がめぐっていることを感じてほしい。心を閉じてしまうのでなく、心を開き共に生きるいのちを感じてほしいですね。
 もっと大きな自然を感じること、宇宙を感じること。いのちは、何万年前、何億年前からつながっています。一人ひとりがつながり大きな社会という羅網をつくっている。自分の行動と考えは羅網でつながっている。みんなみんなつながっている。
 問い 憲法9条を守るということは、命につながっているんですね。
 問い そのとおりですよ。人間は、一人ひとり違います。違う人と人がつながっているからうまくいくんです。助け合うからうまくいく。戦争は、そのようなあり方と正反対です。


人間だけでは生きていけない思いを

 問い 憲法とか平和とか、これまで考えたことがなかったんです。広島に行き、沖縄に行って平和は自分たちで守るものと思うようになりました。
 貫主 「生きる」ことは、人間の基本的なことです。同時に、人間だけでは生きいけないことを知ることが大切です。水がなければ生物も生きていけない。水を守るには、自然を大切にしなければならない。助け合いが必要です。自然の中にいるとそのことがよくわかります。
 生きるには、平和でなければなりません。戦争というのは、相手をやっつけることです。それは基本的にだめです。命の大切さの先に憲法があります。
 ただ生きるだけでなく、一人ひとりがもっと光り輝きあうことです。やさしさを伝え、温かさを大切にしてください。そのためには、あなたの根っこを大きくしなければなりません。知識も大切ですが、知識を活用できる智慧がもっと大切にされねばなりません。それが根っこにつながります。根っこがしっかりしていないと、枯れてしまいますよ。
 意識がしっかり真理に結びついていると、風雪に
あってもしっかりしています。「生かされている」という根を伸ばしてください。

“ゆっくりゆったり”がほんとうに大事

 問い 毎日を楽しく生きることを学ぶには、どうしたらいいんでしょうか。
 貫主 自然の風物に接することです。庭に咲いた花でもいい。ゆっくり・ゆったり見つめる、写生もいいですよ。花がどんな曲線を描いているのか、その美しさ、なぜ美しいのか、じっと見つめているとその奥深いいのちが共有できるようになります。花と対話ができるのです。
 じっと見つめるだけでなく、いのちの大切さを感じてください。いのちは自然とつながっています。そうするとゆったりした心が生まれます。
 5月のころです。いただいた桜の木を植えました。鹿に食べられないように、しっかり囲いをしました。ところが、ぽっきり折れていました。鹿ではないと思います。しかし、折られた桜の木をそのままにしておきました。11月になって、芽が出てきたんです。感動しましたね。ちゃんと頑張っていたんですね。根っこの大切さが伝わります。
 朝陽を見ると、いのちがみなぎってきます。「あけぼの」というのは、日本の美意識のひとつです。そういうものは、だんだん消え行くようですが、「にじみ」「うるおい」、温かさに通じています。
 「あたりまえ」のことに「ありがとう」といえること、あなたがたがもっと輝き、光になってください。お元気でね。

 これが、私のメッセージです。

 やさしく包み込むような表情と語り、信楽貫主が教えてくれた「いのちの重み」をかみしめ、鞍馬寺を後にしました。いのちの大切さをやさしく語りかけるように話す信楽貫主(鞍馬寺で)   



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