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格差生む競争原理のイカサマ

貧困の先にある戦争

ジャーナリスト・斉藤貴男さん

 雇用や労働の現場を取材するたびに戦慄を覚える。失業率の高い沖縄県や北海道に派遣会社がやって来て、若者たちを嘘の条件で釣っては本土の工場に送り込んでいく。関西地方の某県では、市役所仕事の委託先が変更され、熟練を要する職種だからと落札した派遣会社にベテランが移籍できたところまではよかったものの、時給が大幅に引き下げられてしまった。
 世界第二位の経済大国・ニッポンの、これが二一世紀の姿だというのか。資本家が労働者を搾取するという、単純で酷薄な、一九世紀の資本主義に回帰しているようだ。
 派遣会社だけが悪いとは思わない。江戸時代の暴力組織が展開していたという口入れ屋の現代版を利用し、若者を安くこき使っては高笑いしている連中がいる。
 それは財界トップが率いる大企業だったり、地方自治体や中央官庁だったり。本来なら世の中を善導し、天下に規範を示してしかるべき集団の指導部が、むしろ積極的に社会的弱者を痛めつけ、従来にも増して多くの果実を掠め取っては、階層間の格差を拡大していく構図である。

●人権奪う構造改革
 考えてみれば、市場原理、競争原理を絶対視する新自由主義思想に基づく構造改革路線は、それだけで国民の生存権を保障した日本国憲法第二五条を破壊しつつあるのではないか。  雇用・労働の分野だけではない。命の沙汰も金次第と言わんばかりの社会保障改革も、生活保護や児童福祉に向けた国の補助金を削減する三位一体の改革も、みんな同じベクトルを示している。将来のリーダー候補を伸ばすためには、普通の子どもの教育機会を奪うことさえ厭わない教育改革に至っては、ほとんど基本的人権の否定にも等しい。
 何が競争原理だ。競争を謳うからにはスタートラインが同じでなければならないが、現実社会には孤児もいれば、銀のサジをくわえて生まれ落ちた世襲政治家のそのまた息子や娘もいる。本人の責任でもなんでもない所与の条件の違いを無視すれば、あらかじめ有利な立場の者が勝つに決まっているではないか。
 競争でも何でもない。こういうのを「イカサマ」とか「八百長」というのだ。


●戦争に行くのはだれか
 国の交戦権を認めずにきた憲法九条を書き換えようとする政府・自民党の姿勢も、当然、こうした流れと不可欠の関係にある。差別のないところに戦争もないと私は思う。貧しく権力に遠い若者から戦場に送り込まれ、あるいは自ら兵役を志願するしかない経済構造こそ戦争の普遍的な真実だ。
 アメリカの兵士たちを見るがいい。同盟国だからといって、あれと同じような社会・経済構造にしてしまったら、私たちは後世に顔向けができないと知るべきである。
(連合通信)


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