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憲法を武器に生きやすい社会を

フリーターは将来のホームレス予備軍

作家 雨宮処凛さん

 いま日本の若者は、「こうすれば安心して働き生きていける」というモデルを喪失した社会での生活を強いられています。すでに一部で現実化していますが、フリーターは将来のホームレス予備軍。一方の正社員も長く勤め続けるのが難しいほどの過重労働で、安泰とはとてもいえません。

 ところが、フリーターになるのも過重労働で倒れるのも「自己責任」という考え方が社会の主流。その中で、常に競争に勝ち続けることを求められています。でも、そんな社会はおかしいと思う。どんな人でも無条件に生存が肯定されなければなりません。
 若者の「生きづらさ」や自殺問題に向き合ってきて感じるのは、これらを個人の「心の問題」ととらえている限り、何の解決策も見いだせないということです。背景には、財界による雇用流動化策があるし、地球規模での市場競争推進政策が潜んでいる。
 でも、そのことに気づいたら、ある種の突破口も見えてきました。
 私自身、高校を出て上京しフリーターになりましたが、定職はなく、バイトを簡単にクビになる生活を繰り返していたことがあります。当時は、フリーターには労働基準法は適用されないと思っていましたし、労働組合に入れるとは思ってもいませんでした。

 だけど、いま状況が変わりつつあります。低賃金で生活はぎりぎり、普通に働いているのに結婚して子どもを産み育てることができい−このことのおかしさを一人が言い出したら、多くの人が「そうだ、そうだ」と賛同し始めている。 
 日雇い派遣で働く若者が組合を作ればたちどころに百人を超える人々が集まる。合法的反撃が始まり、その主張が通り始める状況が生まれています。

 そんなたたかいの武器になっているのが生存権をすべての人に保障した憲法二五条です。みんな自分たちの苦しさを生存権の問題ととらえ、権利を主張し、要求している。最低賃金の引き上げや、フリーターでもまともに生きられるルールの確立、利用しやすい生活保護制度などは、憲法二五条を実践することで、すべて実現可能だと思うのです。

 フリーターであったころ、私は絶望感の原因を問い、自分の存在価値を「国家」に寄り添うことで見つけようとしていました。大きな存在にすがる思いから「愛国」に救いを求め、「おしつけ憲法反対」を訴える団体に所属したこともあります。
 そんな私の認識を変えたきっかけが、貧困からの解放を求める人々の運動との出会いでした。
 イラク戦争に従軍している米兵の多くが貧困層です。それと同様に、いま日本で貧困層が大量に生み出されている背景にも「戦争に行って死んでくれる層を作り出そう」とする政治の意図を強く感じます。

 そうした意味で、私の中で憲法二五条と憲法九条は結びついているのです。戦争放棄の九条は生存権に最も深くかかわっていると感じています。

 
あまみや かりん 
1975年北海道生まれ。愛国バンド「維新赤誠塾」のボーカルを務めていた時、ドキュメンタリー映画に主演(99年)。現在は不安定な日々を生きる人々に焦点をあて、取材、執筆、運動を展開している。『生きさせろ!』(太田出版)、『プレカリアート』(洋泉社)など著書多数


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