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2015年 6月11日

            つまずき始めた安保法案
国会審議を検証

「米軍支援」の本質明らかに

 安全保障関連法案(戦争法案)がつまずき始めた。国会審議では、政府の裁量次第で今まで以上に米軍の戦争に参加できるようになることが明らかに。安倍首相によるやじや不誠実な答弁に加え、衆院憲法審査会では与党推薦の参考人からも「憲法違反」との意見が表明され、政府の思い通りにはいかなくなっている。

▼曖昧な基準で戦争加担

 最大の焦点は現憲法下で集団的自衛権の行使が許されるのかどうかだ。日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより「国の存立」が脅かされる場合、武力行使を可能にする改正だ。「専守防衛」の大転換となる。
 安倍首相は中東のホルムズ海峡に機雷が敷設され、石油を輸入できなくなるという事例を挙げた。経済的な理由で武力行使できるのか、が問われた。
 当初岸田外務相は「経済的な理由は含まれない」と述べていたが、後に「総合的判断」と答弁を曖昧に。これに野党が反発、一斉に退席し、審議が中断した。経済的理由による武力行使を認めれば、歯止めはなくなってしまう。
 他国領土にある基地への攻撃についても、「法理上はありうる」と明言。米国が北朝鮮を先制攻撃するケースも問われ、安倍首相は「国際法上違法なので支援することはない」と繰り返した。しかし、結果として日本が戦争に巻き込まれた場合、米軍を支援するのかという質問には、答えをはぐらかし続けている。

▼リスク増加に触れず

 今回の法案で、世界中で米軍などへの後方支援が名実ともに可能になり、イラク戦争当時と比べて、より戦場に近づくことになる。
 当時は「活動期間中は戦闘が行われないと認められる地域」と定めていたが、法案は「戦闘行為が行われている現場では実施しない」に変更。これにより、今日は戦闘がなくても、明日は銃弾が飛び交うかもしれない地域への派兵が可能になる。後方支援で行う輸送や補給は、武力の行使そのもの。真っ先に攻撃対象になる。
 危険の増大は誰の目にも明らかなのに、政府は「攻撃を受けない安全な場所で活動する」と、十分な根拠を示さないまま「安全」を繰り返している。

▼当初の目論見は頓挫

 野党の批判に対し、安倍首相が一貫して主張するのが、「国民のリスクは低減する」という主張だ。

 審議で、政府はアフガニスタン戦争後に治安維持業務に携わった「ISAF」(NATOの国際治安支援部隊)のような部隊への派兵を否定していない。当地で民間人を誤って殺してしまうリスクが増え、そうなれば中東地域での日本への信頼は決定的に失墜する。日本への「テロ」の危険も高まるだろう。

 米国の戦争に日本政府が過去に一度も反対したことがないという事実も政府自身が認めた。ベトナム戦争やイラク戦争のような無法な戦争は、これまで「集団的自衛権を禁じる憲法があるので」と断れた。法案が成立すればどうやって拒否するつもりなのか。

 中国と周辺国との領有権紛争が強まる南シナ海への対応を念頭に置いていることも示された。首相は「中国への抑止力を強めるためには、日米同盟の強化が必要」と言う。隣国敵視を強めながら、米国の庇護(ひご)をあてにし、対米追従を強める姿勢で大丈夫なのかどうか。

 6月4日の衆院憲法調査会では与党推薦の憲法学者が安保関連法案は「憲法違反」と批判した。政府は火消しに躍起だが、6月中の衆院通過は難しくなってきた。国民を煙に巻きながら多数議席で法案を押し通そうという当初の目論見はつまずき始めている。


ファシズムへの危機だ/安保関連法制/自民・村上誠一郎議員が批判

 憲法学の権威が「違憲」と断じる安全保障関連法案について、自民党のベテラン議員からも批判の声が上がった。党内で穏健派と評される村上誠一郎衆院議員が6月10日、日本弁護士連合会主催の集会で発言し、「ファシズムへの危機だ」と警鐘を鳴らした。

 村上氏は集団的自衛権の憲法解釈をめぐって、自民党の高村正彦副総裁と対立している。村上氏は「戦前のドイツで全権委任法を成立させ、ワイマール憲法を葬った時と似ている。民主主義の危機、ファシズムへの危機だ」と発言。「強行されれば米国の(派兵)要求を断れなくなってしまう。こんな不完全な法案を軽々に決めていいのか」と苦言を呈した。

 さらに、財政や軍事上の負担を次世代に負わせることになるとも述べ、「自民党はいつから惻隠(そくいん)の情のない党になったのか」と嘆いた。〈連合通信〉         
 

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