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拙速な設立はするな

「京都地方税機構」で府議会請願ー
地方税・国保料(税)徴収共同化を考える会 

府民への十分な説明のため「公聴会」を

 深刻な経済危機のもとで、大企業による「派遣切り」「下請け切り」などが横行し、経済・雇用情勢はさらに悪化、「構造改革」の推進とあいまって府民のくらしと営業の危機がいっそう深化しています。 

こうしたもとで今、失業、賃金やボーナスカット、売り上げの急激な減少などにより、税金や国保料を「納めたくても納められない」といった困難な状況もひろがっています。

 一方、今、各自治体では、「三位一体改革」による5.1兆円もの地方交付税の削減や急速な景気悪化による税収減などにより、極めて深刻な財政危機が進行しています。財政危機と「三位一体改革」による3兆円の税源移譲も背景として、各自治体では税の徴収対策が最重要課題とされ、「公平性の確保」「効果的処分」をはかるとして、住民の生活実態や営業の実態を無視した預金の差し押さえなど強制的な滞納処分を強化しています。「定額給付金」支給日に合わせ市税の滞納者を対象にした一斉の預金差し押さえを行う自治体まで現れ、総務省が「景気後退下の家計への緊急支援であり、差し押さえは趣旨に合致しない」との見解を示すなどの事態も起こっています。

 こうしたもとで、4月9日、京都府と府内25市町村(京都市除く)で構成する「税務共同化組織設立準備委員会」は、税務共同化の「広域連合」である「京都地方税機構」の設立と、「広域連合」の規約案、組織案、事業計画案等についての「合意」を行いました。「合意」では、各自治体の6月議会で規約案の議決を行い、「広域連合」の設立許可申請、諸手続きを経て来年1月から徴収先行で業務をスタートさせるという手順が示され、徴収の共同化だけではなく課税も含めた共同化の準備をすすめることや、市町村の希望により国保料の徴収もあわせて行うこととされています。また、共同化の目的と効果として、徴収率の向上(98%を目標)と業務の効率化(大幅な人員削減)などがめざされています。

 4月の「合意」を受けて、現在、各自治体の6月議会で「規約案」の提案・審議が行われています。
この中でも、今回の「地方税機構」についての様々な意見や懸念が出されています。長岡京市議会では、「規約案」は可決したものの全会一致で意見書を採択し、「当初の目的がいつ達成されるのか不透明」「いまだ調整中で決定されていない事項がかなり多い」と指摘、「府民の納税の権利を守り…健康や生活の保持を侵害するような滞納処分は行わないこと」など7項目の意見を付しています。福知山市議会総務委員会では、滞納者の実情に応じた「納税緩和措置」を積極的に講じるよう求める請願を趣旨採択、京田辺市議会では、「一律的な強徴処分を行うのではなく…納税の猶予措置を講ずる等、実態に応じた措置を取る」と理事者が答弁、宇治市議会での提案説明では、「1年以上の滞納分などは移管するが、年度内分納者や生活困窮者は移管対象外とし従来どおり市で徴収する」とされるなど、「京都地方税機構」による一律的・機械的な強徴処分の実施を懸念し、これに釘を刺す動きなども広がっています。

 私たちは、今回の「京都地方税機構」の設立については様々な問題があると考えています。
 まず第1に、自治体固有の課税自主権が侵害されないかという問題です。
地方団体は、それぞれ賦課徴収権を持ち、独立・対等の関係にあります。税務行政は自治の根幹に関わる業務であり、税務の共同化によって自治体にとっての課税自主権(例 超過課税、不均一課税、課税免除、法定外普通税制定権、減免、納期限設定など)がどうなるのかということは大変重要な問題です。課税自主権は前提であると説明されているものの、事務の効率化や標準化を行うことで、各自治体の歴史や努力のなかでつくられてきた独自の制度や納期等が統一され、課税自主権が事実上侵害される恐れもあります。
第2に、税務行政が自治体の総合行政から切り離される問題です。

 貧困と格差が拡大し、経済危機が進行するもとで、生活するのが精一杯でとても住民税や国保料(税)を払う余裕がないという状況も広がっています。こうしたもとでは、まず納税者の暮らしと営業の実態に目を向け、納税の緩和制度や福祉、融資制度の活用なども含めた総合的な対策をとる必要がります。税務の窓口は住民と直接接する各自治体の総合行政の重要な窓口機能も担っています。
税務行政を総合行政から切り離し、広域化・効率化をすすめ、徴収率の引き上げ自体を目標に掲げることによって、ますます税務行政が機械的・強権的になることが懸念されます。京都府では、府税事務所の統廃合による広域化や毎年の人員削減によって、滞納者との折衝の機会も持てなくなり、内容を確認しないまま差押禁止財産の「出産育児一時金」が振り込まれた預金口座を差押えるといった問題も起こっています。
 第3に、18市町村の国民健康保険料(税)も共同化の対象とされている問題です。
国保は福祉であり、資格証の発行に端的に表されるように保険料(税)徴収と給付は密接に関連しており、ペナルティー的な手法がとられ、保険証がないなめ受診遅れの死亡事例が報告され社会問題となっています。まして、「保険料を払えば食えない」と思わずにはいられない高額な保険料です。ここでも、徴収だけを強化すれば人権問題にもなりかねないと言えます。

第4に、個人情報保護の問題です。
 「広域連合」には、各自治体の持つ個人情報・個人財産情報が集中・集積されることになります。各自治体の持つ住民の個人情報は、各自治体の個人情報保護条例により保護され、電子情報については特に慎重な取り扱いを行うことが別途定められています。個人情報保護の点から問題がないのか大いに懸念されるところです。

第5に、各自治体や府民にとって本当にメリットがあるのかという問題です。
 各自治体の独自システムとの関係での二重投資、「広域連合」の新たな費用負担、実際の徴収や事務の効率化の効果などを含め、本当に個々の自治体にメリットがあるのかということも十分に明らかにされていません。京都府当局からは、徴収の共同化だけではあまり効率化の効果はないとの説明もあり、メリットについては課税も含めた共同化が前提になっています。しかし、課税自主権を尊重する限り、準備段階で構想されたような「市町村から税務課をなくす」ような課税も含めた全面的な共同化はあり得ず、その効果についても大いに疑問が残ります。かえって負担が増える場合も考えられます。

第6に、府民に対しての説明責任が全くといっていいほど果たされていない問題です。
 上述したように、多くの問題、懸念があるにも関わらず、税務の共同化と「広域連合」設立が、住民の中にほとんど知らされないまま強引にすすめられようとしていることです。
 税務行政は自治の根幹に関わるとともに公権力の行使に関わる業務であるだけに、住民に対する十分な説明と合意が求められます。昨年徴税のみの「広域連合」が設立された静岡県では、設立前にパブリックコメントなどの形式的手続きだけでなく、説明会の開催など住民に事前に意見を聞き合意を得る努力が払われてきました。京都府は、決まったら「十分理解が得られるよう説明する」という態度で、事前に住民の意見を聞き合意をはかる姿勢を持っていません。

 私たちは、多くの問題を持つ「京都地方税機構」については、府議会での慎重な審議をしていただくとともに、府民への十分な説明を行っていただくことがまず必要だと考えています。
以上の趣旨から、以下の点について要請いたします。

【要請事項】
一、「京都地方税機構」への参加については、慎重な審議を行うとともに拙速な議決を行わないこと。
一、「京都地方税機構」についての府民への十分な説明を行うよう、自治体、府振興局単位の「公聴会」の開催へ府議会としても努力していただくこと。


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