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厳罰化で犯罪は減らない

アムネスティなどがシンポ

貧困問題の解決が必要

 裁判員制度の実施を目前に控えるなか、国際的な人権団体アムネスティ・インターナショナル日本と死刑廃止などを求めて活動しているNPO法人・監獄人権センターは5月16日、東京で刑事施設の運営改善や貧困問題について考えるシンポジウムを開いた。

●自己責任論の高まり
 日本では04年の刑法などの改正により殺人といった重大犯罪の有期刑の上限引き上げや時効延長などが行われた。昨年からは犯罪被害者が裁判で質問できる被害者参加制度もスタート。加害者に対して厳罰を求める世論の声が強まっている。
 都市社会学を研究している南山大学の森千香子准教授は、福祉削減や規制緩和による貧困が治安悪化につながり、刑罰を重くすべきという風潮を生み出していると指摘し、「セキュリティー(安全)強化を訴えるのは有権者へのアピールに過ぎず、政府の責任逃れだ」と批判した。

 厳罰化の効果についても、受刑者が家や仕事を失うだけでなく、社会福祉の停止や家族の絆の弱体化など、一時的だった貧困を慢性化させているフランスの例を挙げて、「実際には解決するどころかむしろ深刻な問題を引き起こしている」と語った。
 受刑者の矯正や保護について研究している龍谷大学の浜井浩一教授は、ここ数年の殺人事件などの凶悪犯罪の発生件数は減少しているものの死刑・無期懲役判決が増加している現状にふれ、「自己責任や個人の問題といった常識的で分かりやすい厳罰化世論の高まりとそれを受け入れるポピュリズム型政治がある」と指摘した。

 加えて、社会的弱者ほど刑務所に入れられやすい傾向も問題視した。
 罪を犯して検挙される年間200万人近くの8割が不起訴や略式起訴、罰金などで済む。残りの二割についてもほとんどが執行猶予。実際に刑務所に収監されるのは、3万人程度に過ぎない。その多くは非暴力的な犯罪者で、凶悪犯はわずかである。その理由について、浜井教授は「窃盗や無銭飲食など金銭的余裕のない人間が多く、弁償や示談もできずに収監されている。刑事司法の中で勝ち抜けゲームになっている」と述べ、再犯防止のためにも社会復帰の受け皿となる福祉施設や支援制度の整備を訴えた。

●貧困者生活の支援を
 反貧困ネットワークの湯浅誠事務局長は、失業者が追い詰められた末、やむなく犯罪に走った派遣村の相談者の事例を紹介。歯止めとなる社会福祉が機能しない『すべり台社会』によってNOと言えない労働者が生まれる「貧困スパイラル」を止める必要があると指摘し、「貧困者の生活保障を積極的にサポートすると同時に、野宿に戻らせない居場所を作っていかないといけない」と語った。


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