アプローチ研修が始まったけど…

公共性、公務サービスをどう見るかが課題

 7月25日から本庁・京都市内の地方機関の職員を対象に「アプローチ研修〜府民本位の府政のために〜」が始まっています。年内には全地方機関で行われる予定です。
 夏の暑い時期、忙しい職場の中で、たとえ「半日」とは言え、全職員対象の研修のあり方に、職場ではさまざまな意見がでています。また、参加者からは、「アプローチ研修」そのものの「行政経営品質」を問うような声も寄せられています。

 さまざまな感想・意見が…

 「一人ずつ『いつ行けるか』と事実上の強制動員。でも研修の中身を聞いてもきちんと説明されない」「意識づけが不十分な中で参加するから、グループ討議も盛り上がらない」「何かインパクトがない研修だった」という感想がある反面、「民間はやはり厳しいと思ったが、公務員も同じだと背筋が伸びる気がした」「府民のための仕事がしたいという初心を思い出した」という意見も。また、「『行政経営品質とは何か』の事例は、遊園地の観覧車、マクドナルド、ディズニーランド、スーパーのレジなど、そのほとんどが『民間』の話。『行政』はどこに行ってしまったのかと思った」という感想も寄せられています。

 何を学ぶかが大切

 研修では、入園者が少なく廃園もささやかれていた動物園を、職員と市当局が動物と入園者の両方を大事にする視点からよみがえらせた事例もとりあげられています。動物のユニークな見せ方「行動展示」が今、テレビや新聞で話題になっている「北海道旭川市立旭山動物園」のとりくみです。これが職員の「意識改革」という観点で強調されています。
 「話を聞いていて、すぐに思い浮かんだのが3月に廃院された洛東病院のこと。全国的にも評価の高かった洛東病院のリハビリ医療、それを採算性のみで、チャンスも与えず、突然廃止した京都府こそ、旭山動物園の経験に学んでほしかった…」洛東病院におられた組合員はこう言います。
 公の施設のあり方を検討するなかで、旭山動物園に視察に行かれたことのある植物園分会の役員さんたちにも聞きました。「意識改革とか言って、発想の転換をつまみ食いすることで、この事例をとらえたら間違いが生じます。そこにたどり着くまでの過程そのものを学ぶべきです。彼らは、動物園(ZoologicalGarden)とは何か、どうあるべきかを職員同士で議論し、自分たちの専門性を発揮するなかで、どう市民に開かれた施設、財産として生かしていくべきか研究を重ねることにより、自発的に意識を高め合ったんです。同時に、現場の職員の提案を真摯に受けとめる執行体制や予算という財源保障もありました。結果や現象だけでとらえるのでなく、そこから何を学ぶかが大切だと思います」と公共サービスの本質、公務労働の専門性の重視を強調されました。


 職場の力・現場の視点で

 「府民の視点で施策を見直すことは大切。でも、研修では府民本位とか府民満足とか言う言葉は多用されたものの、『公共性』や『公務労働』という観点がなかった」という感想も多く聞かれました。それがインパクトがない、なんかイマイチという印象にもつながっているのでしょう。
 近頃、「経営品質」「意識改革」という言葉がやたら使われますが、京都府の場合、民間や他の自治体の手法をそのままもってくるのでなく、府民の暮らし、現場の視点を大切にした、職場での自由な政策議論や提案ができる雰囲気と体制をつくることこそが大切ではないでしょうか。

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