災害から府民の生命と暮らし守る

府政最前線でがんばる府職員

台風23号その時 中丹東土木事務所は…そのA

 中丹東のがんばりみんな現場に急行

 10月20日、中丹東事務所でも職員が朝からパトロールや現場の視察に駆け回った。一人で出向かねばならない土木技師がほとんど。
 お昼をまわったときに、「増水がひどい、現場におれん」「まわりは水浸し、人も閉じ込められた」舞鶴方面をパトロールする職員から一報が入る。
 「これは大変な災害になる」と現場で実感したベテランのパト班員。事務所が正確に情報を把握されているのか、遠い現場から不安が募る。(写真は173号)
 駐在からは応援要請が入る。しかし、現場に出払った職員が戻らない。3時ごろになってやっと4人を派遣することができた。現場が遠く、道路が通れるか不安、4時過ぎに現地に到着。この応援を後に道路は寸断された。舞鶴は孤立状態になる。
 電話の対応もたいへん。奥上林など中丹東管内全域から緊急電話がひっきりなしに入る。

 次々起こる崩土においつかない体制

 5時過ぎには、173号線の三和町近辺で「崩土があった」と警察から連絡が入る。雨が降りしきる中、担当職員が駆けつける。現場に着くと片側が何とか通れる状況。2時間ほど現場で安全確保を図る。
 そこに他の道路で「崩土発生」の連絡。現場に急行。この時、国道27号線が通行不能に。京都方面や綾部方面からの通行道路は限られてきた。
 そのうち、国道173号の「崩土」現場の道路が崩落。道路が寸断された。
 状況を14時前後に戻す。綾部と舞鶴の境辺りにある小俣は、道路工事中だった。建設事務所が立っていた。そこに差し掛かった道路パト班。眼前で事務所が飛んでしまった。舞鶴方面は雨だけでなく風が強くなってきた。ビニールハウスが風で飛ばされたことを後で知る。
 175号の道路から由良川を見ると、水位がどんどん上がる。みるみる増水。見ているだけでこわいほど。事務所に状況を報告しようと携帯電話を握ったが、通じなく民家で電話を借りて連絡。
 道路は交通渋滞で身動きがとれなくなる寸前。やむなく事務所に引き返すが、現場の人たちは残った。
 残った人たちは「危なくなったらどうしよう」とパト班と相談していたが、結局ひとりが取り残され、近所の家に避難。

 河川改修中の仮橋へ急行

 17時ごろになるともうパニック状態になるほど、台風の被害が増える。由良川に流れる犀川にも緊急出動。河川改修中で仮橋を設置していたが、その橋が増水で流されそうになっているとの報告が入る。河川砂防室だけでは対処しきれない。他の室からも応援を受け、現場に急行。
 川は、ごうごうと音を立てて流れ、今にも仮橋が流されそう。通行止めのバリケードをつくったが、しばらくすると仮橋は流されてしまった。
 「これは大変や、川が氾濫するかもしれない」「住民を避難させなあかんかも」と、地元消防団とともに住民に注意を呼びかける。綾部ではこのときの雨量がピークでだんだんと雨足は衰える。
 犀川の対応が終わると、真っ暗な中、職員は他の現場へ駆けつける。この日は0時まで現場にいた若手職員もいる。危険を意識する時間的余裕もなかったといったほうがいいだろう。土木職員のドラマは無数にあり、語りきれない。

 総合振興局の役割は発揮できたのか

 中丹東土木事務所は、舞鶴土木と統合し5月にスタート。事務所は1階と2階に分かれ、しかも、1階は2箇所、上と下3箇所に寸断された。「土木はひとつ、お互いの連絡と協働がないと仕事できない」と言われてきた。そのうえ舞鶴は駐在になり権限は付与されていない。
 今回の台風23号対応では、中丹東は70数名の職員が待機した。舞鶴は5人が待機。しかし、管内は広い。気象条件も日本海に面する舞鶴と綾部では違う。現場ならではわからないことが多い。
 災害は、情報の集中と共有、適切な指示、対応、住民への情報提供など大切なことがたくさんある。職場アンケートから、いくつかの声を拾ってみた。
 「1階の管理室では情報がほとんど入らない」「管理室に通行規制の問い合わせが殺到した。刻々と変わる最新情報が届けられず、住民からしかられた」
「総合振興局の役割が見えてなかった」
 「このような災害は、対策本部としては振興局長が本部長となり、責任者は土木事務所の所長のはず。この危機管理が問われている問題でもある」
 福知山、綾部、舞鶴を統括する振興局は中丹東広域振興局(東舞鶴)だ。台風23号の災害時は、この広域振興局に警戒支部が発足される。広域な振興局で、緊急時の災害に対応できたのか大きな問題を投げかけている。
 「土木駐在職員の強化を」との見出しで京都新聞(12月1日付)は、「観光バスが水没した由良川沿いの道路では現場対応が遅れた。第一線の出先が消えた影響がなかったか」「検証が求められる」と、問題提起した。振興局や土木事務所の広域化が災害や緊急対応を困難にしていないか、台風23号を教訓に「検証する必要がある」との声は、各職場で聞かれた。
 災害現場までいけなかったことや交通遮断で舞鶴が孤立する事態になったことからも、災害や緊急対応などには、身近にあってこそ府民の頼りになる機関として役割が発揮できることを台風23号は教えている。  
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