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2016年05月09日

重大事故を招く「まさか…」の油断
全国安全週間(7月1~7日)6月は準備月間です

厚生労働技官 城田 正義さん

現状年間1000人が犠牲に

 安全週間は、1928年(昭和3年)の開始以来、「人命尊重」という基本理念の下、続けられてきました。労使をはじめ、関係者のたゆまぬ努力により、労働災害は長期的には減少してきましたが、今なお1年間に1000人近い人命が失われています。

 さらに、コンビナートの爆発・火災など一度に3人以上が死傷する重大災害の発生状況にも目を向ける必要があります。昨年の発生件数は全国で266件。前年より25件の減少ですが、過去10年を見ると、200件台後半から300件台前半で推移しています。

背景経験豊富なベテラン減も一因

 長期的には減少傾向とはいえ、なぜ死亡災害や重大災害はなくならないのでしょうか。

 私は第一線の労働基準監督署で安全衛生課長として労働災害防止対策の推進に携わってきました。

 最近の労働災害の減少率鈍化の背景として、次の二つの要因が大きいと考えています。1点目は「労働災害が多発した時代を経験し、防災の知識や経験が豊富な世代の退職」です。もう1点は「長期的に災害が減少したため、労働災害のない職場環境が当然視されてしまったこと」です。

 こうした環境下では、ある種の大きな油断が経営者、担当者そして労働者にも生じてしまうのです。

 「まさか、停止していた機械が突然動き出すとは思わなかった」 これは、動力機械に腕をはさまれ、重傷災害を発生させた事業場の担当者から聞いた最初の一言です。災害発生リスクの過少評価は、危険の芽を摘み取るせっかくのチャンスを逃してしまいます。

対策「もしも…」の視点を対策に

 そこで私は、「関係者全員が『もしも』の視点を持って労働災害防止を進めていくこと」を繰り返しお願いしているのです。「もしも」の視点は、先手先手の安全対策を行うことで「転ばぬ先のつえ」となります。全員参加による「KY(危険予知)活動」、「リスクアセスメント」などに「もしも」の視点をぜひ取り入れてください。

 「まさか」より「もしも」で備える 災害防止

 これは、私が常に心に刻んでいる安全標語です。全国安全週間を契機に、もう一度、労働災害防止対策の原点に立ち返ることをお願いします。

▲死亡者減少傾向も安心は禁物

 労災による死亡者数は2015年に初めて年間1000人を割り、932人となりました。でも安心はできません。

 というのも、重大災害がここ数年、一進一退を続けているからです。省力化が進んでいるため、コンビナート事故などの犠牲者は多くはありません。でも、そうでない職場で重大事故が起きた場合が心配されます。(連合通信) 

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