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2015年11月09日

政府見解でつくり変えられる危険
発言抄・詩人 中村純さん

教科書問題と改憲を考える

 福島第一原子力発電所の事故をうけて、パートナーと幼い息子とともに京都へ移住しました。

 京都の人々の心と行動に流れる「憲法水脈」を求めた聴き書きをして、通販生活WEB「憲法と京都」として連載しています。2016年1月に、かもがわ出版より「憲法と京都」として刊行されます。京都府では、1950~78年の28年間、蜷川虎三府知事のもと「ポケット憲法」が住民に無料配布され、「憲法を暮らしのなかに生かそう」という垂れ幕が府庁に掲げられていたそうです。

 私の記憶に残る憲法との出会いは、中学3年の公民の「政治」の時間です。一ツ橋出版の「憲法」の副教材で、一年間しっかり憲法を教えてくださった先生がいました。

 90年代半ばから04年ごろまで、教科書発行の出版社に勤務し教科書編集部にいたこと、出版労連の活動に関わったこと、その後教員になったことは、憲法と政治との具体的な出会いとせめぎ合いを私に体験させました。

 戦争の加害性を認めると自虐史観とバッシングを受ける時代の芽が、このころ出てきました。侵略戦争を美化する教科書が「検定に合格するはずはない」と思っていたのですが、今、育鵬社・自由社の社会科教科書が検定に合格し、採択されています。
 14年1月、教科書で近現代史を扱う際に政府見解を明記することを求める内容に検定基準が改訂されました。その結果、 慰安婦や東京裁判などについて6件の検定意見がつきました。教科書の記述が、そのときどきの政府見解に左右されることをよしとする制度です。これらは改憲への序章です。抗い続けましょう。

なかむらじゅん
詩人、編集者。東京都出身。
著書に『いのちの源流―愛しつづける者たちへ』、『はだかんぼ』(ともにコールサック社)など。〈連合通信〉

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