広がる成果主義賃金制度の見直し

労働組合の7割が「問題あり」「不満」

東京都が実態調査

 成果・業績主義の導入など賃金制度見直しが広がるなか、企業の約六割、労組の約7割が見直しに満足していないことが、東京都産業労働局の「賃金制度と労使交渉に関する実態調査」でこのほど分かりました。賃上げを要求しなかった労組の2割がその理由として「査定で個人別賃金が決定される」とするなど、賃金制度の改変が春闘に影響を与えている実情も明らかになています。
 調査は昨年10月時点で実施。都内の1058企業(従業員30人以上)と1142労組が回答しました。

●大企業で進む成果主義
 定期昇給制度がある企業は全体の7割。そのうちの半数が「見直しを考えている」とし、方法としては「自動的昇給部分を引き下げ、職務・成果に応じた部分を増やす」(41・8%)と「定昇を廃止し、成果や業績による賃金決定」(31・7%)の2つが目立ちます。
 すでに成果主義を導入している企業は全体の31・7%。1000人以上規模では57・1%に達するなど、とくに大企業で導入が進んでいます。対象は「全従業員」が63・3%で最も多く、以下「一定職位」22・1%、「特定職種」11・0%の順。
 人事考課・査定を行っている企業は71・4%。その8割以上は全従業員が対象で、「一時金」(85・4%)、「昇給」(78・4%)、「昇格・昇進」(72・5%)などに反映させています。
 評価基準や評価項目について「全部公開」しているのは32・8%、「一部公開」は35・5%、「まったく公開していない」が29・9%。他方、人事考課や査定結果を本人に「全部開示」しているのは24・1%、「1部開示」は40・8%、「まったく開示していない」は30・5%。 苦情処理制度が「ない」企業は65・8%にのぼりました。「労組が参加している制度がある」は5・3%、「従業員代表が参加している制度がある」は8・6%にすぎません。

●半数が賃金制度見直し  
 企業の46・5%が2000年以降、賃金制度を見直しました。目的(複数回答)は「従業員の成果や業績の評価を明確にする」58・5%をはじめ、「賃金決定要素の年功部分を払しょくし査定部分を増やす」35・4%、「従業員の意欲を高める」35・0%、「従業員の業務遂行能力を明確にする」32・9%が多い。
 この見直しについて、「問題があり再度手直しを検討している」と企業の8・1%、労組の17・4%が答え、「必ずしも満足ではないが現状ではやむをえない」と企業の51・8%、労組の48・2%が回答しました。これらを合わせると企業の約6割、労組の約7割が「問題あり」「満足していない」と考えていることになります。
 「満足している」は企業の8・1%、労組の4・6%にとどまり、企業の27・8%、労組の21・4%が「満足しているが一部手直しが必要」としています。

●査定理由に賃金要求せず 
 労働組合には04年春闘結果についても聞いています。
 労働組合の7割が賃上げ要求を提出し、内容では「定昇のみ」(31・6%)と「定昇+ベア」(29・8%)が多い。妥結結果では「定昇のみ」が51・2%を占め、加重平均は4836円。
 春闘で賃上げを要求しなかった組合に理由(複数回答)を聞いたところ、「会社の業績などの理由で自粛した」29・7%が一位、「定期昇給が実施される」24・9%が2位を占めたが、「査定により個人別賃金が決定される」20・1%も3位に入っています。
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