重い国民負担の一方で防衛費は無尽蔵−2004年度政府予算案
 小泉内閣が昨年末に決定した2004年度予算の政府原案は、厚生年金の給付削減や保険料引き上げなどで国民への新たな負担押しつけが3兆円にも上り、庶民生活の破壊と消費不況をさらに深刻化させる内容となっています。
 政府の年金「改革」は、厚生年金の保険料を今年10月から0.354%(労使折半)を18.35%までアップするもの。給付額は現役世代の平均収入の50%程度にまで引き下げられる(現行は59%)。しかも来年度は物価スライド制実施によって給付額は0.2から0.3%カットの予定です。
 公的年金等控除の縮減や老齢者控除の廃止、住民税均等割の見直し、生活保護の老齢加算廃止なども加えると、今後3年間で約3兆円の負担増になり、小泉内閣発足以来の約4兆円と合わせると、負担増は7兆円にものぼるともいわれています。
 国民の「痛み」は、これにとどまりません。小泉内閣の目玉のひとつである「三位一体改革」による1兆円もの国庫補助負担金の廃止、税源委譲、地方交付税制度の見直しによって、福祉や教育を中心に住民サービスの低下は必至と見られます。
 一方、防衛関係費はミサイル防衛(MD)導入などで米国追随の姿勢をさらに強めています。ミサイル防衛システムの関連経費は1068億円ですが、防衛庁は今後8年間で8000億円から1兆円を見込み、それ以後も巨費が投じられます。イラクへの自衛隊派兵のため135億円、へり空母(ヘリコプター搭載大型護衛艦)は1057億円にのぼります。
 このほか、高速道路を新直轄方式で建設するために1300億円、本州四国連絡橋公団の赤字穴埋めなど、小泉「改革」の看板倒れも明確になっています。
 配偶者特別控除、老齢者控除も廃止にー庶民にはさらに増税
 昨年末、自民・公明両党は、「税制改正」として個人住民税の増税や年金課税の強化案を打ち出しました。たとえば住民税では、現在納税者1人あたり年間3千円から4千円の均等割を一律4千円に引き上げる、収入のある妻の非課税措置も段階的に廃止にするというもの。配偶者特別控除は今年から廃止(一部)が決まっており、厳しい増税攻勢といえます。
 消費税の増税については、昨年6月の政府税調中期答申で「税率の二桁化」を打ち出しましたが、今回の「税制改正大綱」は、07年度を目途に「消費税を含む抜本的な税制改革」と税率引き上げの時期を鮮明にしました。また、99年から「景気対策」として実施されてきた定率減税も05年から06年で「縮小・廃止」します。
 高齢者の課税も強化されます。老齢者控除の廃止と公的年金等控除の縮小を盛り込んでいます。実施されると、夫の年金が300万円(妻は80万円)の世帯では、所得税と住民税合わせて94000円もの増税。さらに税法上の所得が増えるため国保料も2万円アップとなります。
 その反対に法人税は減税になります。連結付加税の廃止などの減税策が盛り込まれているのです。法人税に関しては、すでに90年代の減税の結果、税収はバブル期の6割に落ち込んでいます。企業業績が「V字回復」しても税収が伸びない一因にもなっているのです。 企業減税の穴埋めを消費税や年金課税の強化で庶民に肩代わりさせるばかりでは、国民の懐は冷え込み、景気にはマイナスです。こんな増税は、とても許せません。 
04春闘、連合主要単産はベア要求断念。企業は増収予測
 JC(金属労協)によると、大手企業66社のうち、2003年度中間決算の発表されている51社の通期見通し(連結)は、40社が増収予想で、11社が減収予測となっています。
 しかし、JCの主要組合は、一部を除いて2004年の春闘で賃上げを要求しない方針です。03春闘と同じ構図になります。
 ◆自動車は、2年連続でベア1000円を獲得した日産労組が今回も賃上げを要求する予定ですが、トヨタや本田などは「賃金構造維持分」(トヨタで6500円)の確保をめざす考えです。
 重機連合も賃金カーブの確保を重視。現行賃金カーブを引き上げるベースアップは今年も見送ることになりそうです。
 ◆鉄鋼、造船、非鉄の3産別が統一した基幹労連にとっては、今回が初春闘。各部門ごとに取り組まれますが、造船と非鉄は賃上げは要求しない方針。鉄鋼部門は「製造業平均水準への賃金回復」を強調してきただけに、その動向が注目されてきましたが、12月の基幹労連討論集会で「04−05年のベア要求断念」の考えを初めて表明しました。
 JAMは大手・中堅で賃金カーブの維持をめざし、賃金制度の整備されていない中小労組は、連合の指標である「5200円」を掲げる方針。 
 
 2025年度の年金給付は3割台に厚生労働省が試算
 厚生労働省は12月26日、政府・与党がまとめた年金改悪案に基づき2025年度の世帯類型別給付水準を試算、公表しました。 政府の年金改悪案は、厚生年金の保険料を現行13.58%(労使折半)を2004年から毎年引き上げ、18.35%を上限にするというもの。給付水準は引き下げ最低線を50%にする方針です。
 しかし、新聞報道によると共働き世帯の年金給付水準は平均所得の39%、男子単身者は36%に引き下げられるといいます。50%給付は、夫のみ(妻は専業主婦)というモデルケースにすぎないことも判明しています。
  リストラされた正職員の後に派遣職員の配置可能に
          「改正派遣法」の政省令決まる
 今年の通常国会で成立した「改正労働者派遣法」の政省令が固まりました。派遣先企業に対する努力義務の内容を一拡大する一方で、リストラ職場への派遣導入を可能にする改悪も行われています。
 政令省の第一の問題は、医療業務の紹介予定派遣を解禁したこと。「派遣元には医師資格者などの専門スタッフを置くべき」との意見も出されたようですが、専門スタッフの配置は義務付けられずに強行されました。
 問題の第二は、雇用調整で解雇した労働者のポストに派遣導入を認めたことです。企業が労働者を解雇した後3ヶ月以内にそのポストへ派遣を入れる場合、必要最小限の派遣期間を定めることや、自社の労働者に派遣受け入れの理由を説明することなど適切な措置を講じることを求めています。 法の趣旨からすれば、リストラ企業には一定期間、派遣を禁じるのがスジですが、今回の政省令は解雇後すぐに派遣を入れることも可能で、常用代替を促進することになります。派遣を利用した正職員のリストラの横行が懸念されます。
 派遣先の福利厚生などの均衡取り扱いや教育訓練への協力、派遣労働者の雇用安定への配慮など改善点も見られます。
   2人にひとりは就職内定せず。厳しい高校生の就職戦線
      京都の府立高校生は59.7%で昨年下回る
 日高教と全国私教連が全国の来春卒業する高校生の就職内定率を調査した結果、53.4%にとどまっていることがわかりました。未内定者は、約94000人と推計されています。
 29都道府県の494校の調査ですが、就職状況の厳しさか推し量れます。
 男子の内定率は57.4%、女子は47.5% 。都道府県別では、群馬、石川、岐阜、静岡、愛知は70%を超えていますが、北海道と青森は20%台。ちなみに京都(府立高校のみ)59.1%で昨年の10月末と比べ1.9ポイントマイナスで、厳しい就職戦線になっています。
 日高教によれば、「買手市場」を背景に就職に関するルール違反が多発している模様。求人・内定取り消しのほか、内定後に一定期間働かせて正規採用を決める「ためし雇用」が新たに登場。労基法違反が指摘されます。