「給与構造の見直し」についての人事院説明
 
 人事院は2月3日に「給与構造の基本的見直し」に関する」を出し、2月18日に国公労連に説明しています。その内容を紹介します。

 現在、「素案の説明」に基づいて各省ともまた意見交換している、組合・各省の意見を十分踏まえ、できるだけ納得できる内容を固めていきたい。経済財政諮問会議の議論(財政再建とからむ民間議員による人件費削減論もある)、大阪市の給与問題や社会保険庁再編などの動きもあるが、8月成案の予定で間に合う時期に具体案を示し、さらに細部の議論や経過措置の議論に移れるようにしたい。

   1 俸給水準の引下げと勤務地に応じた適切な給与調整の実現

(1)俸給表水準の引下げ
 ・最も低いブロック別の官民給与比較の数値を考慮して、全国共通俸給表の水準について5%程度引下げを図る。
 ※ 平成15年は6.48%(実質5.41%)、平成16年は4.77%(同4.78%)
 ・地場の民間賃金状況をできるだけその地の公務員賃金にも反映するという問題意識がある。全国で総水準を求める結果、地域によっては民より高い地域も低い地域もある(全体では均衡するが)。
 ・一方、地方の高齢層は、年齢カーブが立っているので、少なくとも7%(多くて10%とも感じられる部分も)の逆較差がある。  ・財政再建が取りざたされるなか、公務員の給与が高いとされるのは、この2つ(地域と年齢カーブ)が意識されるからだ。若い人は、それほど高いわけでもない。地方の水準にあわせる水準調整をする。
 ・※印の実質5.41%とは、その年の勧告で水準を1.07%下げたので、それを踏まえた率。昨年の数値が4.77%に変化した原因は、法人化(国立大学病院)で対象人員が2割弱減少したが、地方が多く、高齢者も多かったことなど、地域の在職分布の変動が大きいのでは(寒冷地手当の見直しというよりも)。さらに6カ月定期券化の影響も考えられるが、個別の要因分析は不可能。今年はたぶん大きく変動することはないと思う。
 ・特別俸給表については、行政職との均衡を考慮して決まる。税務、公安など個別省庁と相談するが、これまでのベア決定と同じように処理することになろう。結果として、行(一)より少し高いものも低いものもできるだろう。
 (2)地域手当の新設
・民間賃金の高い地域に勤務する職員に対し、調整手当に替えて地域手当を支給する。
 ・支給地域は賃金構造基本統計調査等を基礎に市町村単位で指定する。地域の一体性を考慮した広域指定も検討する。
・支給割合は東京都区部の現行水準を維持できる水準を上限とする。
 ・「地域手当」は、民間賃金が「高い地域」に勤務する職員の給与について地場賃金との差を調整するものと位置づける。現在の調整手当は3つが要素(民賃、物価、生計費が「特に高い地域」)だが、平成に入ってからの改正では、民間賃金をメインの指標に変えてきた。今回、それをより明確にする(民賃による調整と)。ただし、「特に高い地域」と「高い地域」の違いがある。
 調整手当は全国平均100を大きく上回ることが必要だが、地域手当は100を下回っても対象になりうる。ただし、民賃が指標だが、議論次第では物価、生計費 を補助的に勘案することも完全には否定しない(より適切な調整にむけて)。
 ・単に「賃金センサス」のデータだけだと、たまたまその市に工場がなくてへこむ地域もでるし、ベッドタウン化で低くなる地域もでる。そこを経済圏的指標で調整することもありうる。問題はどうしたら納得が得られるかだ。
 ・自治体合併との関係は、地域手当の決定時点で固定が基本。
 ・東京都区部は5%+12%で17%とも考えられるが、俸給水準が0.95となることから、18%で水準が維持されることになる。昨年の報告では最大20%と述べたが、一極集中の批判もあり、全体バランスからさらなる引き上げには納得性の点で問題ありとの意見を踏まえ、見送ってはどうかとなった。
 ・地域手当と職務給との関係については、基本的に本俸と調手の関係と同じだが、5%の原資を再度配分するということはある。それは、かつてのようにベアで配分することが困難になり、再配分しないと配分が是正できないためであり、今の枠組みの中で処理するもの。また、全国一本の俸給表によってどこでも職務の価値は同じであることと地域で調整は可能であることとは、矛盾するものではない。

(3)転勤手当の新設
 ・円滑な転勤運用を確保するため、広域展開する民間企業の水準を考慮して、転居を伴う転勤を行った職員に対し最大3年間を限度に3〜6%程度の転勤手当を新設する。
 ・地域手当を受給していた者については一定期間転勤手当の額の特例を検討する。
 ・地域手当との併給調整を行う。
 ・地域手当が12%→18%に広がることで、円滑な運用に支障がでかねず、それなりの措置が必要となる。そこで、広域展開している企業の給与水準を考慮し、3〜6%程度の転勤手当を考えている。事業所が複数県に展開しているところでは県内にしかないところとくらべ数%高くなっている。このように民間では転勤者はある程度給与が高いことが想定されることからして、全国・管区異動する公務員が今の水準でいるのは合理性がない。他方、公務には総合職と一般職の区分や、勤務地限定社員もないことから、現実に転居・転勤した人をとらえて、水準調整ができないかと考えている。 ・併給調整とは、行き先の地域手当の率で変わることがある。18%地域への転勤には転勤手当との併給はない。0%から0%地域への転勤(青森から秋田、沖縄から鳥取など)では転勤手当が出る。転勤手当とは精神的労苦や負担への対応、人材確保などの必要から支給するもの。
 ・特例措置とは:現異動保障的な措置への各省の要望が強い。18%地域から0%地域への転勤では、3〜6%程度の手当だけではうまくいかないので、異動保障的なことを考えてほしいと。激変緩和的に初年度は現行水準(12%)にし、2年目は8割にするとか率を緩和していく。従来の異動保障は、すぐには生活は変えられないという生活馴致(じゅんち)の考えに基づくが、今回、これはとらないので、異動保障とは異なる。転居が要件になるのが、異動保障との違いでもある。
 ・併給調整は、現12%地域など高い地域に転居する場合で、転勤円滑化の主旨(民賃との賃金均衡をはかる)が達成されており、地域手当でだけで済む。

 2 俸給表構造の見直し

(1)級間の水準差の是正と級構成の再編
 ・次のように行政職俸給表(一)の級構成の見直し(10級制)を行う。
1)1級と2級、4級と5級を統合
2)職務内容の高度化に対応し、本省重要課長等を対象として12級を新設  ・特別俸給表についてはこれとの均衡を考慮しつつ必要な措置を行う。
 ・級の統合の目的は、前後の級での金額の重なりを抑制することにある。
当初7、8級の統合も提案したが、7級には地方機関の登用の意味合いあると の意見もあり見送ることにした。1、2級はあまり影響なく、4、5級も職責が出先まで分かれることはなく、存続の必要性がとぼしく、統合に大きな問題はない。
 ・一方、職務内容の高度化で本省課長は10級が標準だが、切り上げが進み8、9割方が11級になっている。むしろ企画官など9、10級に分布している。
職務給からみても、職責の高い課長は上に級をつくって区別するほうがよい。加えて、在職期間の長期化もあり、新級を創る必要ありと判断。全体的な職務
> の高度化は毎年の切り上げで対処できるが、11級の上は指定職であり、課長は 課長である以上、(天井に)つき当たる。
 ・特別俸給表(公安、税務)の下位級統合などは、職務の特性など考慮しながらやるが、単純に行政職と一致できない面もある。その必要性も含めて議論したい。
(2)昇給カーブのフラット化
 ・調整手当の非支給地で7%程度ある民間の中高齢層との水準格差を踏まえ、俸給水準の引下げ分と合わせて均衡が図れるよう4級以上の高位号俸の水準を最大7%程度引き下げ、3級以下及び中位級前半号俸の引下げは5%を下回るものとする。
 ・4級以上の各級について初号から最大7号俸の号俸カットを行う。
 ・昇格時の号俸決定方式を昇格前の俸給月額に級別に一定額を加算した額に金額対応する俸給月額に決定する方式に見直し。
 ・これも概ね(1)と同じような問題意識。年功的なカーブの立ち上がり(4級のまま7級中位号俸までいける)と、「職務」というよりは「昇給」が給与決定でウエイトを占めるようになっている。そのため、民間は年齢別カーブを平らにする傾向があるなかで、若年層が割を食う。
 ・ではどの程度フラットにするか。非支給地で高齢層は最低7%公務が高い。そのため、最終到達号俸では5%に加えて2%下げて、若い方に積みたい。この層の額は高いので、3級以下などに相当積めるので、若年層を下げない方向でできないか。根拠としたデータの公開などについては、いずれ相談したい。
 ・号俸カット:1号上位昇格によって、4級昇格では4−2に昇格するので、1号俸は不要。同様に5級は2号俸まで不要。6級は3号俸まで…と、現在使っていないものを中心に最大7号減らしたい。
 ・以上のカーブのフラット化と号俸カットによって、双子、三つ子号俸が大量に発生し、1号上位昇給のメリットの調整が大変になる。したがって、1号上位を見直し、定額加算(1万円なり)して、一番近い額に格付けするようにしたい。その方が制度としても優れている。その意味では、1号上位昇格と同様の制度ではない。勤務成績によって選ばれて昇格するさいの給与上昇はあっても良いし、むしろそれが自然だ。民間でも昇格時の給与効果は普通だ。

 3 勤務実績の給与への反映
 
(1)勤務実績に基づく昇給制度の導入
 1)昇給幅の細分化等
 ・勤務実績を反映させやすくするため、現行号俸を4分割する。
 ・職員層毎に昇給号俸数別の分布割合を設定する。 ・事務の簡素化も考慮して、昇給期を年1回(例えば4月)にする。
 2)枠外昇給制度の廃止 ・職務給の徹底を図るため、いわゆる枠外昇給制度を廃止する。
 ・民間の成果主義賃金見直しの動きは承知している。しかし、納得性を高めるための見直しが中心であり、成果主義をやめて年功給に戻る例はなく、年功給がよいとはならない。当面、実績の反映は必要だ。国公法も勤務実績で決める建前だが、運用が年功的になっているので、運用もにらみながら、制度を切り替えたい。 ・現在、普通昇給は99%が成績良好で昇格しており、特別昇給(15%)はやや持ち回りで、制度の主旨に反する運用もあると認識。なぜ持ち回りかと各省に聞くと、1年1号では重すぎるという意見だ。1号は大きすぎるというなら、1/4なりにして、よく頑張る人は6/4、なんとか頑張る人は3/4といった制度にできないかと考えたもの。郵政の昇給制度がこれと似ている。また昇給期をそろえることも、現在昇給期が年4回であるが、1号俸を4分割で実質上同じになる。昇給月は現在4月を考えているが、国税庁などから意見があり、統一するかも含め検討する。 ・分布割合は、係員は能力進展中であることから、ちゃんと働けば4号分とするなど、世帯形成層までは差をつけず、それより上の管理職層にはある程度差をつけるというように、係員、補佐、課長などの級で分布率を変えたい。
 他の表の場合はこれから相談。各職種の職責の程度や差の程度が妥当かなども 考慮する必要がある。
 ・今の普通昇給、特別昇給は査定だが時期が違う。これを一度にやる、特別昇給は上位の分布率に吸収されることになる。
2)勤勉手当への実績反映の拡大
 ・勤務実績をより的確に反映し得るよう、一定月分を原資として留保する。
 ・成績率別の分布割合の基準を設定する。
 ・民間は業績評価はボーナス反映が一番多い。公務は前6月の成績で差がつくようにしたい。現在、扶養手当が上位者の原資となっているが、少子化や共働き普及で上位者につけられなくなっている(他律的要因)。現在の標準0.7月から例えば0.05月をとりわけ、0.65月を標準としてこれを原資に上位者につけられるようにする。この程度なら本当に頑張る人を区別することはできよう。
 ・人事院としては、最上位何割とかの分布割合を示して各省にやってもらう。分布率については、民間の分布状況もみるが、民間は標準6割、上位2割、下位2割が大部分だが、下位2割を強制的に出させるようなことは、今の評価システムでは不可能だしやるつもりもない。

(3)昇格基準の見直し
 ・昇格の判断がより適切に行われるよう、昇格について、一定期間における勤勉手当・昇給の判断を通じて把握される勤務実績が良好以上であることを要件とする。
 ・能力評価制度では、昇任と昇格を区別する必要があるが、今回の見直しでは、昇格は勤務実績が「良好」以上が要件であることを規則、通達で明確に位置づける。
 ・評価は能力とか実績に分けず、勤勉や査定で把握された勤務成績でよい。資格基準表の「年齢基準」は年功的システム原因と誤解されるので、良好評価を2〜4回受けるとかの形にして、実質的中身は維持したい。
 ※ 給与決定のための勤務成績の判定についての改善
 本格的な評価システムの整備については引き続き検討を行うこととするが、本年の夏においては勤務実績を適切に給与へ反映させるため、現在の勤勉手当の成績率及び昇給の決定において行われている勤務成績の判定について、着目すべき要素の明確化、勤務成績不良者の判断基準の明確化、分布割合の設定など一定の改善を図るための措置を講じる。
 ・新行革大綱では、評価システムについて、人事・恩給局が17年中に管理職の試行を検討することになっている。
 ・人事院としては、ボーナスや査定昇給を対象とするシステム確立は夏までは無理だが、これまでと同じ運用では国民や議会の理解が難しく、完成時の給与の受け皿は用意しつつ、1歩でも2歩でも前進したい。  ・しかし、下位の分布割合を定めることをはじめ、大きな差を付けることは本格システムではないので困難だし、標準的な厚い層を分けることも困難。しかし、少なくもだれがみても上位者はいるし、その部分を区別することは可能。
 ・特昇、勤勉の運用に近い、「勤務実績」だけでなく、職務行動や業務プロセスをみる。昇給は来期の期待実績に応じるものであり、前年に加えた習熟、能力の伸びなどをみる着眼点を示せないか。また、下位の分布率を示すことはできないとしても、無断欠勤、業務上指導措置を受けた場合など何らかの基準を示せないかと考えている。人規10−2(勤務評定の根本基準)の現行制度はさわらず、評価のツールの一つとしてはおくが、具体的改善は今やっている勤務実績の評定についてやる。
 ・以上の検討課題は人事院が決めることであり、労使交渉に代わるものであり、給与に使う以上勤務条件性はある。組合の意見を踏まえて検討するが、第3者機関の判断で行うことに基本的に問題ないと考える。

 4 その他の課題

(1)専門スタッフ職俸給表の新設
 ・行政の多様化、複雑・困難化に対応するとともに、複線型の人事制度の導入に向けての給与制度上の環境整備として、専門的な能力の活用を目的として、3級構成程度の簡素な級構成の専門スタッフ職俸給表の新設を検討する。

 ・この主旨は高度、専門能力確保(政策専門でもっぱらやるような)をきちんと処遇するもので、専門行政職とは異なる。税務・公安等から移るものはあるかもしれないが、公権力行使という性格はなく、政策をずっと研究している人などが想定される。今は各省と相談中だが、定削の中でそういうものに人をさけるのかとの意見もあるが、主旨は専門能力の熟成にある。
(2)俸給の特別調整額の定額化及び本府省手当の新設
 ・民間の役付手当の定額化を踏まえ、俸給の特別調整額について超過勤務手当の支給実態を考慮しつつ、支給区分別・職務の級別の定額化を図る。
 ・民間の同種手当の動向等に鑑み、通勤手当を官民比較の給与種目から除き、特別調整額を比較給与種目に加える。
 ・本府省課長補佐の特別調整額を本府省手当に改め、措置の必要性が認められる本府省課長補佐以下の職員を対象とする(役職別・職務の級別の定額とする)。
 ・民間の役付手当は定額がほとんどであり、職務給からして、課長、部長の手当が定率で月額が低いから低いという公務の実態はおかしい。職責に出すことから、級別定額が基本ではないか(10級の1種、2種でいくらと)。超勤実態も考慮しながら、地方を中心に定額化の機会に水準の適正化を図れないかとも。定額化で全体水準も維持できると考えている。
 ・比較給与から通勤手当を除きあらたに俸給の特別調整額を入れる。6月定期券化で通勤手当は実費弁済の性格が強くなり、組合の主張もあり除くことに。代わりに役付手当(超勤代替的性格もあるとかいわれているが、年俸制、定額化の中で「比較給与外」とするのも合理的でない)を入れる。これで大体見合いの額になる。
 ・本省手当とは:平成4年に本省対策で(本省課長補佐)6種8%を新設。これはもともと管理職手当とは異質で、人材確保や業務困難性に着目したもの。しかし、係員等には何もないことから、本省勤務の特殊性と位置づけて、係長を含め苦労する人に積み増しする。補佐も管理監督性をみるのが建前だが、補佐8%というのは、本省の特性、企画立案、国会対応などに着目したもの。
 ● 施行日、経過措置については内容が固まった中で改めて。経過措置の必要は十分認識している。
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