地方交付税削減方針・「給与構造の基本的見直し」の公表に抗議

自治労連・書記長代行談話

1.経済財政諮問会議は5月24日、来年度の政府予算の骨格を決める「骨太方針2005」に民間委員の要請を受けて、国家公務委員と地方公務員の「総額人件費の削減の基本方針」を秋までに策定することを盛り込む方向を打ち出した。
また、人事院も5月18日、こうした財界・政府の意向を受けて、今年の勧告で予定する「給与構造の基本的見直し(措置案)」を公表した。

2.人事院が公表した「給与構造の基本的見直し(措置案)」は、@公務員給与水準を一律5%引き下げるとともに調整手当を廃止し、これを原資に最高18%の「地域手当」を新設し地域間の格差を大幅に拡大する。A給料表を10級に再編し、新たに「現行12級相当」の級を10級に位置付けるとともに、初号に近い号俸水準のみを引き上げるなど、中央省庁のキャリア官僚優遇の制度改定を行う。B「給与の昇給カーブ」を30歳代半ばから50歳台の中高年層を中心に平均を上回る7%近く引き下げるなど全面的な給料構造の見直しを行う。Cさらに重大なのは、特別昇給・普通昇給を廃止し、現在の「1号俸」を4分割し、「1号、2号、4号、6号、8号俸」アップの格差を設ける「査定昇給」に全面的に切り替える。D勤勉手当についても「標準者」の支給月を5/100引き下げ格差支給を拡大する。等々を柱とした給与構造の全面改悪と、徹底した「成果主義賃金」の導入をめざすものである。

3.こうした人事院の「見直し案」は、第1に、公務員制度「改革」に対する国民的な批判の中心となった「官僚制度」の見直しの世論に全く逆行する「キャリア官僚優遇」の見直しであるとともに、国家公務員以上に、すべての地方公務員の給料構造、給与水準、勤勉手当など諸制度の全面的改悪に導くものである。第2に、5%の賃下げと調整手当の全廃、それを原資とした「地域手当」の新設は、地域間の賃金格差をいっそう拡大するもので、本来是正されるべき民間大企業と中小企業の賃金格差、大都市と地方の賃金格差の拡大を助長させるものである。第3に、全面的な「査定昇給」の導入や勤勉手当へ査定の拡大は「モラルハザードを引き起こす」「組織全体のモチベーションを喪失させる」など、民間企業でも破綻しつつある「成果主義賃金」を導入するもので、公務運営の公平性・公正性・安定性・継続性、ひいては、公務員の「全体の奉仕者」という基本的性格を歪めるものである。

4.一方、政府は6月に閣議決定する「骨太方針2005」に、地方公務員の「総額人件費削減」を焦点にさらに地方交付税の削減を強行しようとしている。
5月25日の「経済財政諮問会議」で財界代表の民間委員や財務省が、地方公務員賃金が「地域の民間給与を上回る水準である」「同種の国家公務員に比べて高い水準である」「国に比べて、著しく上位級に偏った職員が構成となっている」などの議論を行い、地方公務員の「総額人件費の削減」にむけた「総人件費改革基本方針」の策定を政府に求めているとともに、これと連動した地方交付税の削減を強行しようとしている。

5.こうした政府や政府の諮問委員会の動きは、第1に、地方公務員の賃金削減を柱とした地方交付税の削減による地方財政のいっそうの悪化に道を開き、地方財政の破綻・地方自治の破壊をもたらすものである。
第2に、こうした「改悪」は、750万人に及ぶ公務関連労働者の賃金引き下げに道を開き、年金・恩給など社会保障の水準の引き下げに連動し、ひいては地域経済に多大な打撃をあたえるものである。
第3に「労働基本権を制約」された国家公務員や地方公務員の給与制度や給与水準について、一方的に論断し制度改悪に道を開こうとするもので「労働基本権のあり方」「代償機能のあり方」を全く否定するものであり、数次にわたってILOが勧告している国際ルールや「労働基本権」を保障した憲法28条を踏みにじる全く不当なものである。

6.自治労連は、こうした政府・財界が一体となってすすめる地方財政破壊、労働者の権利破壊の動きに断固抗議するとともに、住民サービス切り捨ての攻撃にあらゆる分野でたたかっている様々な住民運動と地方自治・地方財政の拡充を求める自治体関係者などとの「共同」を大きく広げるものである。そして、地域最低賃金の引き上げ、均等待遇の実現、公契約法・条例の制定など地域から公務・民間労働者の共同を強め、小泉「構造改革」が作り出している「格差拡大の社会」ではなく、安全・安心・連帯の地域社会を作る運動を固く結合して全力でたたかうものである。
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