民間労働者の賃下げにつながる勧告はするな

京都総評が京都府人事委員会に申し入れ

       人事院勧告に追随することなく、労働基本権制約の
           代償機関としての見識ある勧告をもとめる要請書

労働基本権制約の代償機関として、京都府に働く公務員の勤務条件改善に日々努力されていることに敬意を表します。
 さて、8月15日に人事院勧告がだされましたが、その内容は、史上3度目のマイナス勧告に加え、「給与構造の改革」として来年度からの公務員給与制度を抜本的に変えてしまうなど、私たち働く者にとって看過できないものとなっています。
私たちが2002年と2003年の申し入れでも主張してきたとおり、事実上の賃下げであるマイナス勧告、そして「不利益不遡及」原則を無視するマイナス調整などというものは、ストライキ権を剥奪されている公務員に対して一方的に行ってはならないことです。
 また、今回打ち出された「給与構造の改革」は、民間労働者や地域住民にとっても極めて重大な問題を含んでいるといえます。まず、現在の賃金水準を平均4.8%引き下げて最高18%の「地域手当」を導入することによる地域間格差の拡大、本府省の管理職を意識した新10級や専門スタッフ職給料表の新設、本府省手当の新設などは、首都「東京」・霞ヶ関キャリア組を優遇する一方で地方を切り捨てるものであり、公務員の賃金水準が与える地域経済の影響を考えると、結果として深刻な事態にある地域経済を一層疲弊させるものといえます。
 加えて、昇給カーブのフラット化として導入される中高年層の賃金水準の引き下げは、中高年層の勤務意欲を奪うものといえます。また、昇給や一時金などに民間では破綻済みの成績主義賃金制度を持ち込むことは、昇給や出世のために「物言えぬ公務員」をつくることにつながり、「全体の奉仕者」としての公務員像を根本的に変えてしまいます。結局、これまでの給与制度を根本的に改悪し、勤務意欲の喪失と「出世指向」への傾斜がすすめられ、結果として公共サービスの低下につながることになってしまいます。
しかも重要なことは、「骨太方針2005」の意向を受けた政府・総務省が、こうした国家公務員の給与制度を地方公務員にも導入するよう強く迫っていることです。
人事院勧告の内容をストレートに適用すれば、京都の公務員の圧倒的大多数が、賃金水準の引き下げを受けると聞かされています。しかも、たとえ現給が保障されても、40歳前半の者については今後8年から9年間は賃金が上がらない、40歳後半以降については賃上げがないまま退職を迎える者が圧倒的多数となっています。若年層も、出世しない限り、生涯賃金で1千万円以上引き下がるという大改悪といわれています。
いま、京都の民間企業で働く労働者は、長引く不況と政府がすすめる大企業本位のリストラ政策のもと、低賃金・不安定雇用の状態にあり、その事態が一層拡大しています。パート、非正規、臨時、派遣といわれる不安定雇用労働者は全体の3分の1を超え、青年や女性労働者の半数以上が不安定雇用労働者といわれています。また、こうしたもとで公務職場にも臨時・非常勤の職員が増加しています。
こうした状態を放置したまま、公務労働者の賃金を引き下げることは、官民一体の賃金水準引き下げという「悪魔のサイクル」をつくり出すことになり、その結果、京都経済を一層深刻な事態にしてしまうことになります。
つまり、今回の人事院勧告は、民間で行われている「働くルールの破壊」を公務の世界にまで広げることであり、日本の労働者全体の「働くルールの破壊」につながるものです。
いま、政府や地方自治体が行わなければならないことは、一方的なリストラ・解雇など大企業の横暴を規制して、民間労働者の賃金水準引き上げと不安定雇用を解消することこそ行わなければならないことといえます。
私たちはこれまで、人事院や人事委員会の勧告の内容が、ひとり公務員だけでなく関連労働者や多くの民間労働者に重大な影響を及ぼすことを何回も経験してきました。それだけに、京都府人事委員会が人事院勧告に追随するような勧告をおこなったなら、その内容が京都の多くの労働者に影響を及ぼすことは火をみるよりも明らかです。
 こうしたもとで、今年の京都府人事委員会勧告を前にして、下記の事項について申し入れますので、誠意をもって対応するよう要請します。

                          記

1 人事院勧告に追随することなく、京都府人事委員会の主体性と独自性を発揮し、労働 基本権制約の代償機関として生活改善につながる勧告を行うよう強く求めます。

2 京都府人事委員会の勧告内容が、ひとり公務員だけでなく関連労働者や大多数の民間 労働者に影響することを踏まえて、民間労働者の賃金引き下げにつながる勧告は絶対に 行わないよう強く求めます。 
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