人事院勧告以上の賃下げか!?

総務省の「地方公務員の給与のあり方に関する研究会」の

「基本的方向性」に自治労連が書記長談話

1、総務省「地方公務員の給与あり方研究会」(以下「研究会」)は、8月11日、人事院が、05年人勧で「給与構造見直し」の内容を明らかにすることとの関係で、「地方公務員の給与構造の見直しに関する基本的方向性」(以下「基本的方向性」)なる文章を取りまとめ発表した。
 「研究会」は、既に今年3月「中間整理」をおこない、@地方公務員の給与決定の考え方について「国公準拠」を見直し、より地場の「民間賃金に準拠」させる。A人事委員会の機能強化について、独自調査機能や勧告権限の強化をはかるとともに、人事委員会のない市町村についての検討を行う。C地方公務員の給与決定の参考となる指標の整備を行うD人事院の進める「給与構造見直し」の方向性について検討を行う、などの論点整理を行った。
 そして「研究会」は、これらの課題を具体化するために、秋には30人以下の民間事業所の調査を独自に実施し、より地場の民間賃金に準拠させるための「指標」や人事委員会の「機能の強化」の内容等について検討を進め、年度内には「最終報告」を提出するとしている。

2、今回「研究会」が出した「基本的方向性」は、これまでの検討の議論を踏まえ、人事院の「給与構造の見直し」の内容が明らかにされたことを受けて、研究会としての現時点の「議論を一旦集約することが関係者の参考に資する」として取りまとめたもので、いわば、「05人事院勧告」による国の「給与構造の見直し」について「研究会」としてどう考えるのかを明らかにしたものである。

3、第一に、人事院が、職務と職責を重視し、より勤務実績を反映した給与構造とする方向で見直しを行った点に関わって、地方公務員についても「年功重視の給料表構造を転換」し「昇給や勤勉手当等における勤務実績をより的確に反映しやすくする」必要があるとして、国と同様に「給与カーブのフラット化」と「級間の重なりの縮減」を求めている。
 同時に、実施に際しては「地方公共団体の職務の性格や多様性、具体的組織形態や規模等を留意しながら」行うべきとした上で、「職員の意欲の向上に資するとともに住民が納得できる」給与体系とすべきとしている。
4、第二に、国家公務員の給与がより地域の民間賃金水準を反映したものとなるよう「俸給水準を切り下げ、民間賃金が高い地域に地域手当を支給する」とした点について、人事院の単純な「給与構造基本統計調査」の比較でなく、民間賃金や物価・生計費の反映、職種の類似性や年齢・学歴などを考慮して調査を行ったとした上で、現実の「地方公務員給与の最高値と最低値の乖離の幅が、民間給与の地域間格差と比べて大きな差異があるわけではない」としながらも、民間賃金よりも「画一的傾向」があり地域ごとの民間給与の状況を反映させるという観点から見ると「必ずしも十分でなく」民間給与の的確な反映がなされるよう見直しが必要と論じている。
 ただ「地域手当の問題」が、国家公務員の場合は、給与総額の「全国の配分の問題」であ
るのに対して、地方公共団体では「職員の給与水準そのものであり」、見直しにあたっては「人事委員会の公民比較に一層の精確を期す」「人事委員会のない自治体における民間給与
のより的確な反映のあり方を引き続き検討する」という2点の方向を明らかにしている。

5、こうした基本的な方向性を述べた上で、「国家公務員を参考」にそれぞれの自治体が給与水準の見直しを行う必要があると結論付け、@「地域手当」については、「その必要性や支給内容について住民の理解と納得が得られるよう適切に判断する必要がある」こと。A「広域異動手当と本府省手当」については、「必要性を慎重に判断する必要がある」としている。

6、今回の「基本的方向性」が明らかにした「給料表の構造見直し・勤務実績の反映」に係っては、今日の民間の経験にてらしても公務労働を根本から変質させかねない問題を含んでいるものとして検討される必要がある。
 民間企業の「能力・成果」主義人事管理が、仕事に対するインセンティブの向上につながっていないことや、長期的視点にたった人事管理の構築が欠如し企業活動にも支障をきたすモラルハザードを引き起こす要因となっているなど様々な矛盾を抱え、企業の「存亡」がとわれる問題にまで発展している。
こうした「能力・成果」主義人事管理の根本的な問題の解明抜きに「成果主義」賃金の導入を拙速に結論付けることは、「全体の奉仕者」としての公務員の職務を歪める重大な弊害を引き起こすこと、などについて真剣な検討がなされなければならない。

7、さらに、「地域の民間給与の反映」が必ずしも「十分でない」とした「基本的方向性」のまとめは、「研究会」自身が「地域の民間賃金や物価・生計費の差を反映させる調整手当や単純な民間の平均賃金でなく職の類似性や年齢・学歴を考慮して試算を行った」と、人事院と異なった「地域間の格差」の調査を行い、さらに、国と異なり「地方公務員の場合は職員の給与水準そのものの問題である」とするなど、国と地方との相違についても言及しているように、国家公務員の「基本賃金切り下げ・地域手当」の制度を自動的に準拠することは適当でないと言わざるを得ない。
この問題は、地方に勤務する公務員にとって1200万円もの生涯賃金の削減となるばかりか、「中間整理」で述べられた「人事行政運営に直接かかわり、地方公務員の人材確保にも大きな影響を与える」ものであり徹底した労使交渉・労使合意が大前提とされなければならない。

8、今回の「基本的方向性」は、50年ぶりの公務員賃金制度の大改悪といわれる、05年の人事院勧告による「給与構造の抜本見直し」の内容について、国と地方の一定の異なる「事情」等を考慮して自治体でも実地すべきという立場に立って具体化を図るというものである。
 総務省は、8月24・25日に「全国都道府県総務部長会議」を予定しているが、この研究会の「基本的方向性」をよりどころに、国の「給与制度の抜本見直し」の内容を地方人事委員会や各自治体に「助言」と称して一方的に押し付けることは許されないものである。自治労連は、この「研究会」が進める検討内容について、自治労連など労働組合の意見を反映させることを改めて強く要求するとともに、この秋、「新地方行革指針」や「給与構造直し」など、公務員の「総人件費削減」攻撃に対して、地方自治・地方財政を守り発展させ、地方経済と地方の賃金水準を守る共同のたたかいのために奮闘するものである。

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