自立・自助」「受益と負担」コスト優先の

民間手法導入へ行政システムづくりと

職員の意識「改革」

山田京都府政2年半の特徴くっきり

府職労自治研集会での基調報告

 
 第一は、自治研活動の位置づけ、重要性についてであります。
 
本集会は記念すべき第20回目の自治研集会となります。第1回集会は1972年4月25日に職員会館(現別館)で開かれ、前年の大会で決定された「自治体労働者の役割と責務」を基調に民主的自治体労働者論の討議を深めあいました。それから32年目を迎えるわけですが、府職労は、自らの要求権利を守り前進させることと、府民の命とくらしを守ることを車の両輪として一貫してとりくんできました。そのために、「府民のための府政はどうあるべきか」を自らの仕事を通じて議論・研究する自治研活動を一貫して重視してとりくんできました。府政再編、自治体リストラの攻撃がいっそう激しくなる今日、改めて自治研活動を位置づけ取り組んでいきたいと思います。

 第二は、山田府政をどう見るかということです。
 荒巻府政の継承をかかげた山田府政が誕生してちょうど2年と半年が過ぎようとしています。その特徴は一言で言って「総務省出身の知事として、京都府を市場原理に沿ってつくりかえようとしている」ということだと思います。
そのことを考える際に大事なことは、山田知事の言う「地方自治論」「国のあり方論」がどういうものかということです。京都府のホ−ムページに「おこしやす京都」というのがあります。山田知事が雑誌などで対談した記事が紹介されています。そこで山田知事は、「地方は受益と負担を考慮しなければならない時代になった」「住民も要求型ではなく自立・自助、受益と負担を考慮しなければならない」と述べています。つまり、自治体の役割−住民の福祉と健康、命と暮らしを守るという役割と責任を事実上放棄するということを述べているわけです。 そのことを具体化したのが、「京都府行財政改革指針〜かいかくナビ」です。
 「かいかくナビ」は、@府政運営全般にわたって、「自立・自助」「受益と負担」の名のもとに、コスト優先の民間経営手法を取り入れた行財政システム改革と職員づくり、A京都府のあらゆる事業・組織を民営化の検討対象にすることをうたっています。まさに、地方自治の概念や自治体としての京都府政の存在意義を自ら否定し、京都府を市場原理に沿ってつくりかえ、単なる「行政サービス体」に転落させる内容になっています。
 その具体化として、「地方機関をはじめとする組織の再編」や「組織のフラット化」、「指定管理者制度の導入」、「外郭団体の見直し」などがすすめられています。また、「京都府経営改革プラン」(検討素案)−これは9月16日に出されましたが、かいかくナビの財政版であり、「新たな財政健全化計画」にあたるものですが、年内に肉付けして発表されるそうです。
 第二の特徴は、その強権的な手法とさまざまな手を使った「職員の意識改革」です。
 山田知事は就任そうそう、「知事直轄組織」「連絡調整チーム」をつくるなどトップダウンの組織運営の迅速化・強化をはかりました。今年の組織改革では、「経営戦略室」を新設し、戦略室の企画推進役に、島津製作所の現役課長を2年の任期付で採用するなど、府政を経営体と位置づけたいっそうのトップダウンによる行財政システム改革をすすめようとしています。「府立大学推進プロジェクト」、「府立病院改革プロジェクト」も設置されました。
府立洛東病院の強引な年度内廃止の表明は山田知事の二つの顔を見事に表したものといえます。ひとつは、「どんなに府民にとって必要であっても不採算な部署は切り捨てる」という「市場原理」を貫徹する冷たい顔であり、もうひとつは、手続き的にも病院当局無視、有無を言わせぬファッショ的な顔です。今後の府政運営にとってもこのようなやり方を許さない府民と共同した大きな世論をつくっていきましょう。
職員の意識改革では、部局を越えた課題を提案させ優秀な提案は事業化するという「きょうと未来づくり提案事業」、知事へ直接意見を伝えるという「知事へのe-レター」、「若手職員とのランチタイム」、「めるまがナビ」などが行われています。本来の組織運営を形骸化させるだけでなく、「意識改革」をつうじ職員間の競争をあおり、トップダウンの強化をねらっています。「給与構造の見直し」による成績主義の導入は、その流れをいっそうすすめるものとなります。
第三の特徴は、「市町村合併」「道州制」を強力に推し進めていることです。
山田知事は、知事権限を強化した新合併特例法の「知事の市町村長への合併勧告権」に対し、全国の知事が慎重な姿勢をとっているのとは対照的に、「場合によっては行使する」と表明しています。また、京都府に「市町村行政改革支援委員会」を新法に先立って設置するなど、合併推進の態度は突出しています。
 このあと、北桑支部から美山町のとりくみについて特別報告がありますので、お聞きください。
 また、道州制については、「公共事業を行うには都道府県の範囲は狭い」「都道府県合併を選択した方が現実的」と、道州制への第一段階として「都道府県合併をすべき」との立場をとっています。現職知事として府民の生活や営業を守る立場から出発するのではなく、大企業やゼネコンを優先するのは本末転倒ではないでしょうか。
 第四の特徴は、有事体制を積極的に推進していることです。
山田知事は、元内閣法制局参事官として日米ガイドラインの作成に参画した経歴を持ち、現在、全国知事会の「危機管理研究会」のメンバーとなっています。また、国民保護法との関係では、全国でも突出したかたちで都道府県の権限強化と自衛隊との連携を要求しています。
お隣の同じ官僚出身の大阪府知事が、「住民の安全を守るという知事の役割と、国を守るという自衛隊の役割は違う。連携には慎重にならざるを得ない」という姿勢となんと違うことでしょう。
 今年の組織改正や人事異動での具体的な動きと、国民保護法による府民総動員体制づくりをねらった、「避難訓練」がはじまっていることとあわせ、今後の動きを注視することが必要です。

 第三の報告は、職場の組合員がどんな思いで仕事をしているのかということです。
 7月に組合員さんの協力を得て、「仕事と職場のアンケート」を実施しました。22支部882人の方から回答が寄せられました。 特徴をかいつまんで報告します。
 @仕事にやりがい、働きがいがゆれています。
 「どちらともいえない」が49%、「感じていない」が19%、併せて68%となりました。なぜなのか、その原因を討論で深めることが必要です。
 A仕事の判断基準では、「府民や利用者の要望」がトップとなっています。
 「府民や利用者の要望」、「法律・条例・規則」に続き「職場や同僚の意見」が3位。職場での議論 など職場の民主的運営の重要さを示しています。
 B府政が力をいれるべきことでは、「社会保障関係」 が多数となっています。
 福祉、保健、医療など社会保障関係が多くなっています。社会保障に冷たい小泉構造改革を反映して いると思われます。
 C「フラット化」と「地方機関の再編」では否定的回答が多くなっています。
 仕事の変化については、「フラット化により変化があった」が22%、「地方機関の再編で変化があ った」が36%となり、地方機関再編による方が多くなっていま
 す。また、変化の内容については、地方機関再編に対する否定的な項目が多く掲げられているのが特 徴です。
 D権限委譲では「内容が熟知できないので混乱」するが多くなっています。当局による内容の周知徹 底が充分なされていないことの反映と思われます。
  「事務処理方法が異なり手間取る」も多くなっています。 権限が委譲されても、府としての統一 的処理が必要な事項も多く、その基準や指導調整も課題として残っています。
 自由記述も含め、職場が、職員がどうなっているか是非深めて欲しいと思います。

 報告の最後になりますが、今後のとりくみについてです。3点強調させていただきます。
 第一は、府民の目線で府政再編に立ち向かおうということです。
 「三位一体改革」では、府政懇談会や利用者懇談会・アンケートの実施など府民と共同の運動を追求します。
 「指定管理者制度」に対するとりくみでは、「公の施設」が果たしている意義と役割、公共性と住民の利用権、仕事の専門性などをとらえ直すことが必要です。また、「指定管理者制度」に移行されることが予想される職場や04年度が見直し作業集中期間とされる外郭団体の職場、独立行政法人化も検討の視野に入っている大学などでは、当局に説明責任を果たさせ、必要な要求申し入れや交渉も配置しましょう。
 第二は、自治体らしい京都府政めざす府民要求実現のとりくみを強めることです。
第三は、京都府政研活動と日常的な自治研活動を強めることです。
 
いま、市町村、都道府県とも大きな再編の時期にさしかかっています。自治体労働者と住民が手を携えて、新しい地方自治の発展をかちとるため、本日の集会を契機にお互いに奮闘することを決意しあいまして報告とします。
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