年間3万人を超す自殺者、中小企業の倒産、若者の就職難と低賃金・無権利、生活保護世帯の増。その一方で大企業は空前の儲けで貯めこんだお金は83兆円(金融業除く)。小泉「構造改革」で府民のくらしと営業は?実態を取材しました。 |
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福祉の谷間にある「若年認知症」 |
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妻が突然不整脈で倒れて・・・ 千代野さんが倒れ、厳しい現実が富田さん夫婦と3人のお子さんを襲いました。重度の脳障害が残り、リハビリのために4つの病院を転々としましたが、その後、後天性の若年認知症患者である千代野さんを入院させ得る病院・施設が見つからなかったのです。 「自助努力や本人の甲斐性だけでは、どうにもならない」事態。相談に行った近くの福祉事務所も、最初はつっけんどんな対応。年齢と病状だけの理由で、どんな制度にものらず、「福祉の谷間に落ち込んだ気持ち」だったといいます。 地域の応援なしには介護は不可能 自宅での介護がスタートしましたが、地域や職場のみなさんの応援なしには乗り切れない日々でした。その後、ボランティアや施設特例での介護を経て、2000年4月からは何とか介護保険の適用を受けることになり、今に至っています。 富田さんは、「認知症は潜在化し、今も制度の狭間にある」と語ります。自宅の南区の学区では100世帯ほどが認知症の患者を抱える世帯だと推測されています。しかし、はっきりした数字ではありません。それは、夫が患者である場合、妻が保健所や福祉事務所へ届けることを控える傾向があるからです。そうした家庭での介護の負担は、妻に大きくかかっていることは想像に難くありません。 富田さんは、「まず、どうしても行政の責任でつかむ必要がある」と強調します。 保険料が月20万円の時も 「毎週、毎月が綱渡りの日々でした」 残業できないため、富田さんは早朝出勤します。5時過ぎには家を出て、会社のカギを開けるのが7時。そして介護サービスを受けてきた千代野さんを夕方5時過ぎに自宅で迎えるというのが富田さんの基本サイクルです。 しかし、どうしても残業せざるをえないときがあります。2年前には夕方6時30分まで仕事をしなければならない事態が続きました。その月の支払い保険料は、通常の3万7千円が20万円に膨れ上がりました。 富田さんは、「妻が認知症になった場合、自営業は別として、夫や家族は高い確率で勤め先をやめている」と語ります。「いつでも、だれにでも起こり得る障害と介護の現実。行政は、家族が働き続けられる環境をつくってほしい」 最近は、元気な千代野さんが徘徊をはじめるという新たな心配が起こっています。 「声を上げ続けなければ、何も変わらない」と富田さん。奮闘は続きます。 |
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