市町村合併押しつけでなく

「あたたかいメッセージ」を

送るのが都道府県の役割


町の未来を決めるのは住民

いま、「鬼の里」では…

 「鬼」の町おこしで全国的にも有名な大江町。静かな町が、いま、市町村合併をめぐって熱く燃えています。合併の賛否を町民に問う住民投票条例の制定を求める直接請求運動が始まったからです。
 福知山市と大江・三和・夜久野3町の法定合併協議会が@福知山市に3町を編入A市名は福知山市B市庁舎は現・福知山市役所C移行期日は05年3月などを確認したことに対して、「合併は協議会で決まったんだからしかたがない…というのはおかしい」と住民が立ち上りました。
 「まともな議論もなく町の将来が決められるのは納得がいかない」「自分は合併には賛成だが、大事なことはみんなで決めるべきだ」…と、合併に「賛成」の人も「反対」の人も「よくわからない」人も、「住民みんなで決めよう」の一点で集まりました。「大江町住民投票ネットワーク」です。元校長、元町議会議長、医師など10人が代表になりました。

若い世代も関心を…

 町会議員として、この直接請求運動に参加しておられる「新風の会」所属の宮木猛さん(29歳)にお話をうかがいました。
 「もちろん議会でも大いに議論するが、議員としてすべての有権者の意見を聞けるわけではない。間接民主主義の限界、それを補完する制度として地方自治法でも直接請求がある。合併という住民にとって重大問題こそ、直接民主主義の発動が必要だと思う。また、自分も10年ほど町を出ていた人間だが、町が住民説明会をしても自分たちの世代、20代、30代はほとんど関心がない。町民一人ひとりが町の未来を真剣に考えるいい機会にもなると思っている」。
 署名期間は1か月(4月24日まで)。必要な署名数は、有権者の1/50以上(96人)。署名の提出後、町選管が署名簿を審査。成立した場合、本請求の受理日から20日以内に町長が議会を招集し、提案することになります。
 大江町では、すでに署名を集める人(受任者)だけで500人を組織、有権者の過半数2、500人をめざして署名運動がとりくまれています。

京都府は丹後で評判を落とした…

 4月1日、「京丹後市」が発足しました。丹後6町でも、昨年、合併の賛否を問う住民投票条例を求める直接請求運動がとりくまれ、住民の4割の直接請求署名が提出されました。しかし、その手続き中に(議会招集前後)6町長は強引に合併調印、その調印式に京都府知事がわざわざ出向いて祝辞を述べています。議会に対する無言の圧力だったと言われ、6町議会は否決しました。

宮津・与謝でも…

 2月6日、新市庁舎の位置などで合意にいたらず、法定協議会解散の流れが強まっていた宮津・与謝地域でも、京都府幹部が出向き「調整をしたいので、了承してほしい」と説得。3月5日には、協議会での議論もないまま、加悦町長が協議会長名で京都府の合併検討組織「市町村行財政改革支援委員会」に助言依頼を提出。5日後の3月10日には、「助言」を検討するための府の支援委員会が開催されています。府幹部の訪問について、「枠組みの強制」「これこそ合併の強要そのもの」と批判の声があがっています。

強権的ではなく住民の意思の尊重を

 来年3月で期限切れとなる合併特例法にかわる新法案が国会で審議されています。いまの特例法の目玉である「合併特例債」などの財政優遇策をやめる一方で、知事の仲介権限を認め、合併を一段と促進しようとするものです。「アメをつけても動かない市町村に対し、国が新たにもちだした手段」(3月10日朝日新聞)といわれるように、都道府県の権限が強められています。
 合併は何よりもそこに住む住民の意思が尊重されるべきです。当然のことながら合併だけを唯一の選択肢にしてはなりません。合併推進のための手だてだけでなく、合併しない市町村や結果的に合併できない市町村への手だても必要です。
 府の「市町村行財政改革支援委員会」は、合併がうまくいかないところや頓挫したところをテコ入れするだけでなく、地域の将来像や発展策を積極的にアドバイスする役割を果たすべきではないでしょうか。長野県や高知県で合併しない市町村を支援するとりくみがすすめられているように、京都府からのあたたかいメッセージが求められています。