憲法・地方自治の精神を生かして、

真の財政再建に全力でとりくもう


〜「京都府経営改革プラン」に対する見解〜

 京都府は、3月28日に開いた京都府経営戦略会議で「京都府経営改革プラン〜新・財政健全化指針」を決定しました。また、このプランを「京都府行財政改革指針〜かいかくナビ」が目指す改革を財政運営面から取り組んでいく指針であると位置づけています。

1 「削減型」から「経営型」に

「京都府経営改革プラン」では、2008年度頃には経常的に単年度で約500億円の収支不足が発生するため、持続可能型の財政構造の確立にむけて単年度500億円の削減効果ができる「経営改善」を行うとし、「集中と選択による施策の見直し」、「事業手法の改革」、「府民、民間企業、市町村との役割分担と協働」で150億円程度の削減、「業務改革の推進」で250億円程度の削減、「積極的な増収策」で100億円以上の増収効果を生みだすとしています。
また、これまでの一律削減型による財政健全化では限界があり、限られた「経営資源」を有効に活かしていくという「経営感覚」に基づく「行政経営品質の向上」に取り組むとし、「削減型」のリストラから「経営型」のリストラに転換するとしています。

2 総務省も新しい地方行革指針

一方、総務省も3月29日、「新地方行革指針」を策定し、地方自治体に通知しました。 この「指針」は、昨年の12月24日に閣議決定された「今後の行政改革の方針」を受けたものであり、各自治体が2005年度を起点におおむね5年間の「集中改革プラン」を策定して公表することを促しています。
 そして、@事務・事業の再編・整理、廃止、統合、A民間委託等の推進(指定管理者制度の活用を含む。)、B定員管理の適正化、C手当の総点検をはじめとする給与の適正化(給料表の運用、退職手当、特殊勤務手当等諸手当の見直し等)など9項目の内容を示ししています。

3 地方交付税の大幅削減を狙う総務省

今回の総務省通知の背景には、今年1月20日に開催された「経済財政諮問会議」で「消費税増税などに国民の理解を得るためには、まず行政改革が必要」と強調されたように、「国民への痛み押し付け」への批判を逸らすための公務員攻撃があることは明白です。
 また、政府は、2004年度予算での地方交付税等の大幅削減に地方が強く反発したため、2005年度と2006年度については一定の一般財源を確保しましたが、2007年度からは「中期地方財政ビジョン」を早期に示して交付税を削減することを明らかにしてきました。今回の「通知」は、こうした2007年度以降の地方交付税等の大幅削減に地方自治体を対応させようとしているものといえます。

4 「総務省発」の「京都府経営改革プラン」

「京都府経営改革プラン」は、「行政サービスにおけるコスト感覚の重視」を強調し、「地方独立(行政)法人制度」や「指定管理者制度」、「公営企業等の経営改善」、「公共事業改革の推進」、「外郭団体の見直し」、「NPO等とのパートナーシップ」、「民間企業との協働」、「外部委託(アウトソーシング)」、「PFIの導入」、「市町村との役割分担・協働」など総務省の示す「新地方行革指針」の手法を列挙しています。
「京都府経営改革プラン」の推進期間は、2004年度から2008年度までの5年間としていますが、内容は総務省通知の「新地方行革指針」に沿ったものであり、まさに「総務省発」の「経営改革プラン」といえます。むしろ、1年先取りしているところに、今の京都府政がいかに総務省に忠実なのかを示しているといえます。このことは、知事も副知事も総務部長も総務省出身という、全国的にも突出した京都府の異常な体制と決して無関係とは思えません。

5 京都府を「経営体」に変質

「京都府経営改革プラン」は、「総務省発」の「行政サービスにおけるコスト感覚の重視」を強調するとともに、「経営型組織・執行体制の確立」として、「人事評価制度の導入」や「給与等の適正化」、「本庁組織の再編、地域機関の見直し」など、これも「総務省発」の新たな「経営手法」による人員削減と給与抑制の方向を打ち出しています。
 さらに、「電子府庁の推進」として、ITを活用した新たな合理化の推進を打ち出すとともに、「府有施設の戦略的な利活用」や「課税自主権の活用」など府財産の「切り売り」と新たな府民負担の押しつけをすすめる内容になっています。
 「京都府経営改革プラン」の手法は、京都府政を「経営体」とみなし、「府民サービス」より「採算性」を優先させるとともに、府民を「顧客」と位置づけ、「受益と負担」の名のもとに弱者を切り捨てるものであり、およそ地方自治とは無縁のものといえます。

6 府民と職員に「痛み」を押し付ける小泉流の「構造改革」

知事は、1月30日付けの京都新聞で「小泉改革の流れに同感」と語っているように、「京都府経営改革プラン」は、京都府政においても小泉内閣と同様の「痛み」を押し付ける「構造改革」をすすめるものといえます。
このことは、2月府議会で、生活保護世帯への見舞金の廃止、民間社会福祉施設職員への助成金や老人福祉事業費、ふるさと推進事業費の削減など120事業の廃止、152事業の削減を行い、雇用対策や和装伝統産業振興予算の大幅削減を行うなど、府民に痛みを押し付ける平成17年度当初予算を提案しながら、その提案説明で「250億円の経営改革を断行した」と自慢した知事の行政姿勢に明確に現れているといえます。
また、「京都府経営改革プラン」では、「簡素・効率的な組織づくり」として2008年度までに事務部門について1000人程度削減すると強調していますが、この人数には、2004年度に実施した地方振興局等の大規模な統廃合による約200人の人員削減が含まれています。また、この考えのもとに「採算性」だけを口実にして、患者や府民の声を無視して「洛東病院」を平気で廃止してしまいました。そして今度は、「府立高校つぶし」が計画されています。さらに続いて、「施設等の民間委託(指定管理者制度を含む)の推進」、「事務事業の外部委託」など府民と職員に新たな「痛み」を押し付ける小泉流の「構造改革」がすすめるられようとしているのです。

7 6月がひとつの節目に

「京都府経営改革プラン」では、平成11年度以降、述べ4000億円を超える財政健全化を実行してきたとしています。たしかに、私たちが府民とともに早くから「ムダと環境破壊」として指摘してきた公共事業について一部見直しも行われてきましたが、多くは「事務事業の見直し」や「定員の削減」、「給与の抑制」であり、府民と職員の犠牲の上に実行されてきたものといえます。
今回の「京都府経営改革プラン」は、新たな手法で府民と職員に更なる犠牲を押しつけるものであるとともに、自治体を「経営体」とみなして住民サービスを切り捨てる、いわば「地方自治体の自殺行為」ともいえます。
「京都府経営改革プラン」に基づいて、6月には具体的なメニューを盛り込んだ「経営改革工程表」を作成するとしています。また、6月府議会には「指定管理者制度」を導入するため、現に管理委託している「公の施設」の個々の条例が提出されることになります。
そのことも含めて、6月がひとつの節目になります。

8 真の財政健全化にむけ英知を結集してとりくもう

私たち府職労は「財政健全化の基本方向」として、@借金に依存した財政運営からの脱却、A不況・雇用対策の強化で府民の暮らしと経営を守ることによる税収の回復、B府民本位の事務事業見直しによるムダの解消、C地方財政基盤の強化のための府民と手を携えた国への行動という4つのとりくみを提起してきました。
この方向での具体的努力が一層もとめられているとともに、政府がすすめようとしている地方交付税の大幅削減を柱とした地方財政破壊を許さないとりくみの強化が、今こそもとめられているといえます。
地方自治と地方財政を破壊する攻撃に真正面から立ち向かい、真の財政健全化にむけて英知を結集し、府民とともに奮闘しましょう。
                    2005年4月4日  京都府職員労働組合
目次へ